2026年1月30日金曜日

ヒメオオクワガタ

 前回、オオクワガタを紹介しましたが、日本にはオオクワガタに似たクワガタがいます。それがタイトルの通り、ヒメオオクワガタです。オスがオオクワガタに似た形の大顎を持っていて、やや小型なことからその名がついたのだと思います。虫によくある、矛盾した名前ですね。

 

オスのヒメオオクワガタです。あまり大きくない個体ですね
機会があればもっと大きな個体の写真を入れ替えます

大顎の形態以外、全体的な雰囲気はオオクワガタにはあまり似ていません。脚が長くすらっとしていて、どちらかといえば寸胴で短足なオオクワガタとはかなり異なります。メスはもっとオオクワガタとは明確に異なり、優占種のコクワガタにそっくりです。やはり脚が長いことや、前胸の形が異なるなどの違いで区別はできます。

 

これがヒメオオクワガタのメスです

こちらがコクワガタのメスです。恐ろしく似ています

と、偉そうなことを書いていますが、この写真を用意しているときに間違えそうになりました。。。


オオクワガタほどではないですが、このクワガタも結構珍しく、一般的な方法でクワガタムシやカブトムシを観察しているとまずお目にかかれません。出会うには、この種の習性を知っておく必要があります。私も、出会うまでに長~い年月が掛かりました。

 

まず、ヒメオオクワガタは平地には生息しておらず、ブナが生えている高い標高のところにいます。ですのでそのようなところに行く必要があります。標高が高いと、普通の感覚でクワガタが集まるような、樹液の出ている木はほとんどありません。行けばなんとかなると考えて森に向かっても、ピクニックを楽しんで帰ることになるでしょう。

 

ヒメオオクワガタはヤナギなどの広葉樹に集まることが知られています。このヤナギの木の、高いところで幹をかじって樹液を出し、それを吸うという習性が知られています。虫の形は習性と一致していて、だいたい脚が長い虫は歩くのが得意です。高く細い枝に登りやすくなっていると考えられます。ヤナギはブナ帯の沢沿いにはたくさん生えていますから、その高いところにポツンポツンとついている小さな虫を探すという根気の良さが必要です。また、取り込むには網が必要ですが、たくさん枝がついている中に入れるなど、その扱いもかなり難しいです。

 

*ヤナギは平地でもクワガタ採集に優秀な木で、大きな河川のほとりに生えているこれらの木は絶好のポイントになっていることがあります。

 

さらにヒメオオクワガタには他のクワガタとは異なる習性があって、それは秋口に個体数が多くなる、というものです。だいたい9月頃でしょうか。このあたりに成虫が多くなるのです。もちろんそれよりも早い時期でも居ますが、この時期がもっともよいとされています。

 

また、ヤナギだけではだめで、幼虫はブナの枯れ木に入るので周辺にブナが多く生えていることも必要になります。そのような条件が揃っている場所を探すのが大変かもしれません。いるところでは個体数は多く、木を蹴ったりするなどの昔ながらの方法でも得ることはできるはずです。

 

幼虫や新成虫が入っている枯れ木が見つかれば、そのなかを探ることでも採集することはできます。但し、ヒメオオクワガタが入るのはものすごく堅い木です。スカスカの木にはまず入っていません。枯れ木とはいえ、探すのも一苦労です。こちらの腕のほうが壊れそうになります。このようなことから、なかなか出会うのが難しい虫なのです。

2025年12月30日火曜日

オオクワガタ

 言わずと知れた超有名な虫で、多くの方がその名前を聞いたことがあると思います。カブトムシやクワガタムシに興味が出た子供には憧れの虫で、野外で一つでも採集できたら一生の思い出になったのではないでしょうか。他のクワガタとは一線を画するほど得がたいこと、名前の通り相当大型になり迫力があること、変わった形の大あごなど、人気が出るのも頷けます。珍しい割に北海道から九州まで広く生息していることもこの虫を有名にした一因でしょう。

 

関西の有名な産地で自力採集したオオクワガタ、です

私のコレクションのなかに、数体のオオクワガタがあります。どれもあまり大きな個体ではありませんが、これらは自力で採集したものです。オオクワガタにも有名な産地というものがあり、私が小学生~中学生の頃は、今から思えば採集自体はそこまで難易度が高い虫ではなかったように思います。もちろん小学生の私には相当採集は厳しかったのですが、それでも親に連れて行ってもらった時には2回に一度ぐらいは採集できたものです。まあ採集できるのはメスが多かったのでなかなか満足いく採集にはならなかったのですが。もし今の状態のまま当時に戻れたらもっと採集できたでしょう。

 

現在では、この虫を取り囲む状況は悪化するばかりで、自然状態のこの虫を入手するのは本当に難しくなりました。オオクワガタが多い地域の代表は、いわゆる里山という環境です。この里山は利用価値が低いと考えられるのか、伐採によって日本からどんどん失われていっています。オオクワガタが好むのは巨大に成長したクヌギなどの木です。こんな木は一度無くなると、復活するにも相当な時間が掛かります。昔はこのような大きな木がたくさん残っていた地域でも、どんどんと伐採されていき、特に最近ではソーラーパネルを敷き詰めた土地へと変貌していっています。

 

オオクワガタが好む、洞があいた大きなクヌギの木

つい最近、久しぶりにオオクワガタの有名産地に赴いたときにも伐採されている林があり、なんとも言えない気持ちになりながら散歩していました。私が初めてこの虫を手に入れた木は奇跡的に未だに残っていますが、この木が失われないことを願わずにはいられません。


ソーラーパネルの海に沈んだ、かつての好採集地

その一方で、飼育下ではオオクワガタを繁殖させることは難しくなく、養殖された個体はものすごい量になっています。昔は購入するにも大変だった種でしたが、今はそこそこ大きな個体であれば(といっても野外で入手するのは奇跡のレベルの大きさです)手頃な価格で入手できてしまうので、入手に関してはずいぶん敷居が下がったような状態で、良いのか悪いのか、なかなか悩ましい状態ですね。

 

2025年11月28日金曜日

王への謁見

 今年、ついに憧れの虫、日本産の近縁種とは一線を画する大きさ、立派な角を持ち、神様の名前を冠する、そんな「王」ともよばれる虫に謁見する栄誉を得ました。情報をいただいた知人には深き感謝を。

 

そのお姿がこちら・・・

 

オスです

ダイコクコガネ、といいます。超絶有名な虫なので知っている方も多いでしょう。造形が特殊で、かっこよいだけでなく愛嬌もあり、他の追従を許さないぐらいの魅力があります。

 

こちらはメス、角がありません。カブトムシと同じですね

ところがダイコクコガネには強烈な欠点(失礼!)が一つあり、そのせいで数も減らしています。要するに、大型ほ乳類の糞を食べる糞虫の仲間で、牛などを昔ながらに自然に任せて放牧しているところが無くなってきていて、だんだんと住処がなくなっているのです。

 

放牧していても、薬で牛を守っていると、その薬がこの虫にも作用して発生しづらくなることもあるようです。

 

さて、この欠点は人間にも作用します。ダイコクコガネの採集方法は大きく2つあります。一つはライトに飛んでくるので、夜にライトトラップを仕掛けることで出会うことができます。


この個体はライトにきたものです。このために高い装備を買って入念に準備したのです。それでも準備不足でしたが。

 

もうひとつは、、、、分かりますね。そう、牛の糞をいじることで採集できるのです。放牧場は状態も様々な糞だらけ。臭いも強烈、雨なんか降っていたらどろどろです。そのなかを、状態のよい物(ぶつ)を探してうろうろうろ、見つけたらその周辺をスコップで探して回るのです。

 

様々な防具を身につけて防御力を高めて少しやってみましたが、なんか虫屋としてレベルが上がった気がしました。ただ、観察している風景の写真を撮ったりはさすがにできませんでした(カメラを取り出そうとすると、ね)。

 

もっとも、ハイレベルな方々は私なんかでは想像もできないぐらいの低い防御力で機動性を高めて採集をなさるそうで、とてもここでは書けませんが、様々な技術もあるようです。興味があれば検索してみてください。まあ、私はそれほどレベルは上げなくて良いかな、、、

 

 

2025年10月29日水曜日

ヘビ

 最近、夜の観察にはまってしまいました。夜には昼間では見られにくい生き物が見られるために新しい刺激が得られます。それは昆虫に限ったことではなく、ほ乳類や両生類、そして爬虫類にも及びます。

 

この前、伊豆のとある場所で夜に徘徊しているときにこんな蛇に出会いました。

 

指よりも細いです

タカチホヘビ、といいます。夜行性で小さいため滅多にお目にかかれない種類ですが、ようやく出会えました。小型のヘビと聞いていましたが、意外に大きいと感じました。深い藍色をしていて、頭の部分を中心に鱗がきらきらと光り、地味な色合いの割には非常に綺麗です。深い青色が好きな私には大変魅力的に映りました。

 


昔、下田の自宅の前で死んでいる本種のようなものを見つけたのですが、当時は写真も撮らずにいたため、本当に本種なのか、伊豆に分布しているのか、気になっていたのです。ようやくその宿題が片付きました。

 

また別の日には、このようなヘビにも出会いました。

 

意外に眼がかわいいです


「マムシ」です。本州にいる毒蛇として有名です。このヘビと南西諸島のハブの持つ毒は出血毒といって、組織を破壊する性質があります。そのため、噛まれて死に至らなくても、後遺症が残ることがあるため要注意です。このときも、あまり近寄らないようにして撮影しました。

 

また、これは夜ではなく昼間でしたが、このヘビにも久しぶりに会いました。

 

枯れ木に潜んでいました

シロマダラです。結構大きな個体でした。下田周辺には結構いるようですが、生きている個体を昼間見るのは初めてでした。

 

このような、普段の生活では見ることが難しい生き物に出会えるのが夜間採集のメリットですが、もちろん大きな欠点があって、帰宅が夜遅くなるために疲れ果てることです。特に昼間も夜も採集するとなると、必要となる体力も半端ではありません。