2026年6月30日火曜日

コルリクワガタと地球温暖化(久しぶりに長い記事です)

 笹倉研究室ブログ始まって以来で一番意識の高いタイトルではないでしょうか!

 

さて、2026年も既に半年が経過しようとしています。。。。。諸事情で多忙な日々が続いていますが、そろそろ落ち着きたいですね。そのような多忙の中、今年こそ絶対に行こうと思ってた採集に行ってきました。コルリクワガタの新芽採集というものです。

 

以前ルリクワガタの仲間を紹介しました。クワガタとは思えないような形態と色を持った、小さなクワガタの仲間です。

 

今回の主役、青みの強いコルリクワガタ

この仲間のコルリクワガタは、春にブナなどの新芽に集まるという、他のクワガタにはなかなか見られない習性を持っています。春、ようやく緑が芽生えた頃の暖かい日にはブンブンと新芽にオスメスともに集まり、目の高さほどにある新芽をかじって汁を吸うとともに交尾を行うのですが、一年で最も過ごしやすい季節の、良い天気でうららかな日に見られるこの行動は、一度は見てみる価値があろうかと思います。

 

私がこの習性を知ったのは小学生の頃でした。月刊むし、という昆虫の専門雑誌(?)に写真やポイント情報とともに紹介されていました。すぐに見に行きたくなり、親にねだって関西で有名だった採集地の一つ、滋賀県の比良山系まで出かけたものです。

 

実は採集開始早々に背の高いブナの木から1つ採れたのですが、雑誌にあるような、目の高さほどの新芽にブンブン集まるという光景を目指してうろうろして、結局見つけられずに、最初の1つだけでがっかりした思い出があります。

 

それもそのはず、実はこの採集方法は雪国に向いており、関西のような雪解けが早くてあっという間に暖かくなる地域では、芽吹きも早くてあっというまにあちこちで開葉が進み、虫もサッサと活動時期に入って拡散するらしく、そんな一箇所に固まって見られるようなことはなかなかない、というようなことを耳にしました。コルリクワガタは芽が少し膨らんで、開き始めたところを訪れます。開葉が進むとなぜか知りませんが来なくなります。人間から見たら栄養状態はほぼ変わらないように思いますが、不思議なものです。

 

ということで、関西で育った私にはコルリクワガタの新芽採集がずっと心に引っかかっていた人生の目標となっていました。

 

しかも春の季節はあちこちで虫が発生し、どこに行っても楽しい状態になります。雪国は下田からは遠い遠いこともあって、結局40年ぐらいもの間、宿題として残ったままになってしまいました。

 

それではいつまで経っても経験できないということで、今年こそはとようやく重い腰を上げ、5月末に往復800km近くを運転して雪国へと赴いたのでした。この採集のコツは、新芽が開き切る前の良い時期の天気の良い日を狙うことです。今年はこの数年に比べると冬らしい冬でしたし、季節進行もそんなに変なことになってないでしょう。

 

・・・・・

 

ところが、、、、目指したポイントの山にたどり着いてすぐに分かりました。「新芽がない!」見る限り、全ての葉っぱが開ききっています。

 

こうなると遅いのです

季節的には全く問題ないはずの時期です。今年は異常な高温になる日もなかったようですが、どうも異常な季節進行は今年にも当てはまってしまったようです。あちこちうろうろ、100kmほど余計な運転をして探し回りましたが、全く新芽がありません。あとから聞いたところ、北日本では異常な高温の日があって、それで一気に雪解けが進んで季節が進んでしまった、ようでした。

 

このようなときは標高を稼ぐに限ると、近くの山を登り始めます。体力と時間という貴重なリソースを消費してハイペースで登って山頂まで来ました。良さげな新芽はチラホラと見えるようになりました。そして眼の前にある、新芽ではなくて、登山道の木の階段に1匹のコルリクワガタを見つけました。メスです。どうやら上昇気流に乗って飛んできたようです。これでいけるかと、近くにあるカエデの新芽を探しますが、全くいません。先程採集できたのは偶然だったようです。余計に時間を消費してしまいました。。。。。ついでにハイペースで登ったので体力も筋力も消費して疲労困憊です。

 

これはやばいとさすがに焦りが出てきます。メス一つではさすがに帰れません。仕方がないので、急いで下山して更に北を目指します。100km追加で運転です。非常に運転しづらい山道が続きますが、我慢して次の目的地に行きました。途中「登山しなければよかった」「さっさと移動すればよかった」という後悔ばかりが頭をよぎります。そしてようやく目的地につきました。もう午後も2時を超えています。

 

さあこちらも初めてのポイント、どこが良いのか分からず、再び登山してあちこちうろうろします。でも、こちらも開葉が進んでいます。探し回って、日陰になっているところに芽吹きが少しありました。マンサクという木のようですが、まあ新芽には違いありません。待ってみますが、全くクワガタなんかいません。仕方ないので更に上を目指します。筋肉がプルプルと悲鳴を上げていますが、このようなときのために普段からジョギング・筋トレをしているのです。無理やり脚を動かし、どんどん歩きます。すると、なぜか一角だけ、ブナの開葉が進んでおらず、低い木によい新芽がついているところを見つけました。理想的に見えます。

 

じっと新芽のついた木を見ます。すると1つのオスが飛来しました。雪国のコルリクワガタは伊豆や関西のものよりも青が濃くて綺麗です。感動しましたが、そこでは1つだけでした。でも希望が出てきました。こちらのほうが良さそうと勘をたよりに適当に進んでいきます。良い新芽が次々と出てきましたが、なかなか虫はいません。おまけに目的ではないコメツキムシは非常に多いので紛らわしいです。が、さらに歩いたそのとき、ようやく複数の個体がいる場所が見つかりました。写真も撮る余裕が出てきました。

 

こんな様子で枝を歩き回っていました

さらに歩きます。すると、日当たりが良いのに残雪が残っているところで、きらきらとコルリクワガタがブンブン飛び回っているところがありました。噂通り、次から次へと飛んできます。まるで夢のようです。あきらめないでよかったと、その光景をしばし楽しみながら、我に返ると、、、、、

 

オスメスの出会い。こんな光景もあちこちで見られました

あたりにはなんか植物の種と繊維が塊になってあちこちに落ちています。。。。。古くなった熊の糞でした。水たまりの周りに尋常でない量が落ちています。幸いなことに新しいものはありませんでしたが、出会わないうちに退散することにしました。山菜採りの方も来ていたので、安心していましたが、怖い時代になったものです。

 

ということで無事に車まで戻り、疲れたものの満ち足りた気分で400kmを下田まで運転して帰りました。一日で1000km運転、流石に疲れました。

 

後から調べてみると、1980年代には「この地域は雪解けが遅く、6月中旬頃が良い時期」と書かれています。私が今年行ったのはまだ5月です。1か月近くも早いのにもう末期状態でした。温暖化のため虫の出現時期が早くなっているのはもちろん把握していますが、流石に1か月の違いには驚くばかりでした。

2026年6月1日月曜日

キリシマミドリシジミ(オス)

 去年紹介したキリシマミドリシジミ。メスばっかりが羽化したと書きました。

https://ciona-genetics.blogspot.com/2025/05/blog-post.html


その飼育に再挑戦しまして、ようやくオスが羽化しました。今回は2匹飼育して、2匹ともオスでした

 

オスの翅の裏面です

裏面ですら、このように白~銀色で非常に美しいです。

 

そして表、強めのライトを照らすと翅を開いてくれます。


さすがに日本のミドリシジミの仲間で最も金属色が強いだけあって、輝きが強いです。

しかも、この種はシジミチョウのなかでは相当大きいのですよね。


ほとんど同じですがもう1枚、角度が少し異なるだけで色合いも変化します


こんなに美しい蝶が身近にいるのですから、自然を大切にしたいものですね!

2026年4月30日木曜日

ブドウトラカミキリ

 (多忙につき短めです)

ブドウの大害虫で農家さんには忌み嫌われているカミキリムシです。が、非常に採集しづらく、どちらかといえば珍品に属します。というか、カミキリムシを集めている人はわざわざ採集しに行くこともあるほどです。

 

この私も全く縁のない種でしたが、去年の秋にようやく採集できました。通勤路に生えている野生のブドウの仲間の一部が枯れていて、もしかしたらと思って見てみたら中はカミキリムシ幼虫が食べたかすが詰まっており、持って帰ったところ羽化してきました。長年の宿題が片付いた気分でした。

 

一匹だけでした

ちなみに下田初記録だと思われ、報文も書いておきました。




2026年3月31日火曜日

春の珍客

 今、、、とてつもなく忙しいのです。いい意味で、ですが、実験が次から次へと湧いてきます。

なので短めの記事を。


そろそろ春になり、虫たちが活発になってきています。そのような早春に出現する、不思議な模様をした蛾がいます。下田にもいまして、この間自宅に来ていました。



イボタガ、といいます。色は地味な配色ですが、細やかな模様が翅一面に展開されていて、非常に見応えがあります。


大きさもこのとおり




私の手ぐらいあり、かなり大型の蛾です。

ちなみに胴体はこのとおり

もっふもふです。

ちなみにイボタガという名前は、イボタという木を幼虫が食べるからですかね。イボタなんていう木は知らない方も多いと思いますが、下田周辺にはたくさん生えています。初夏に白い花を咲かせ、なかなかきれいです。

2026年2月27日金曜日

ヘラクレスオオカブトムシの謎

もう2月も終わりそうです。。。。早いですね。 


今回の主役のヘラクレスオオカブトムシは世界最大のカブトムシとして大変有名で、名前を聞いたことも多いかと思います。生きたものを一度じっくりと見たいと思っていましたが、最近ペアを入手する機会がありました。

 

15センチほどあるオスです


 こんな虫が近所にいたら毎日ライトトラップをしてしまいそうです。


ヘラクレスは南米に広く分布していて、地域毎に特色がある「亜種」に分けられています。今回入手したのは原名亜種Dynastes hercules hercules です。但し、現地で得られたものではなくて、日本で養殖されたものです。日本にはたくさんいるようですね。。。

 

こちらはメスです。日本のカブトムシに似ていますね

このオスを見たときの正直な感想は、「長い」でした。確かにかなり大きいのですが、どちらかといえば角が体長の半分ぐらいを占め、ひょろ長いという印象です。世界最大、という名前にしては少々迫力が不足しているように思いました。世界最長、かな。


ちなみに、昆虫をみて大きいと感じるときの最も強い褒め言葉は「太い」ですね。少々短くても、太い種は迫力満点に感じます。

 

ヘラクレスオオカブトのオスの角には、ゴージャスにも毛がふさふさと生えています。まるでブラシのようです。毛深い虫は、珍品感が増しますね。虫屋の方に毛深い虫を持っていくと喜ぶかもしれません。

 

この毛ですが、一カ所だけ短いのか生えていないのか、目立たない部分があります。

 

矢印のところ、です

この部分の存在は標本でもわかりやすいのでずっと前から知っていて、どうしてだろうかと思っていました。これは、生きているものを見ているとすぐに分かりました。

 

下の角がちょうどあたるところでした。この個体は新鮮な個体なので、摩耗して抜けたのではなく、最初から生えていないのか毛が短いようですね。間違っていたらごめんなさい。でも、毛が少々すり減ろうとそんなに生存に影響しないようにも思いますので、わざわざ毛の状態を変えるように遺伝子の機能などが変わっていったのは大変不思議で、ここに長い毛が生えていると都合が悪い何かがあるのでしょうね。常になにかに触れられているようで気持ち悪い、とか。

 

さて、このカブトムシ、結構匂います。日本のカブトムシも匂いを出すので近くに居ると分かるのですが、それよりもかなり強い匂いに感じました。また、日本のとは匂いが異なります。甘ったるい匂いです。

 

どこか嗅いだことがあるように感じられ、何かの匂いに似ているな、、、と思っていたのですが、とあるときにその正体が分かりました。

 


こいつの匂いにそっくりでした、というよりほぼ同じです(個人の感想です)。これを舐めた時に口いっぱいに広がる、ヘラクレスの匂い。。。

 

標本からでは分からないことも、生きたものから得られる情報はやはり多いですね。

 

2026年1月30日金曜日

ヒメオオクワガタ

 前回、オオクワガタを紹介しましたが、日本にはオオクワガタに似たクワガタがいます。それがタイトルの通り、ヒメオオクワガタです。オスがオオクワガタに似た形の大顎を持っていて、やや小型なことからその名がついたのだと思います。虫によくある、矛盾した名前ですね。

 

オスのヒメオオクワガタです。あまり大きくない個体ですね
機会があればもっと大きな個体の写真を入れ替えます

大顎の形態以外、全体的な雰囲気はオオクワガタにはあまり似ていません。脚が長くすらっとしていて、どちらかといえば寸胴で短足なオオクワガタとはかなり異なります。メスはもっとオオクワガタとは明確に異なり、優占種のコクワガタにそっくりです。やはり脚が長いことや、前胸の形が異なるなどの違いで区別はできます。

 

これがヒメオオクワガタのメスです

こちらがコクワガタのメスです。恐ろしく似ています

と、偉そうなことを書いていますが、この写真を用意しているときに間違えそうになりました。。。


オオクワガタほどではないですが、このクワガタも結構珍しく、一般的な方法でクワガタムシやカブトムシを観察しているとまずお目にかかれません。出会うには、この種の習性を知っておく必要があります。私も、出会うまでに長~い年月が掛かりました。

 

まず、ヒメオオクワガタは平地には生息しておらず、ブナが生えている高い標高のところにいます。ですのでそのようなところに行く必要があります。標高が高いと、普通の感覚でクワガタが集まるような、樹液の出ている木はほとんどありません。行けばなんとかなると考えて森に向かっても、ピクニックを楽しんで帰ることになるでしょう。

 

ヒメオオクワガタはヤナギなどの広葉樹に集まることが知られています。このヤナギの木の、高いところで幹をかじって樹液を出し、それを吸うという習性が知られています。虫の形は習性と一致していて、だいたい脚が長い虫は歩くのが得意です。高く細い枝に登りやすくなっていると考えられます。ヤナギはブナ帯の沢沿いにはたくさん生えていますから、その高いところにポツンポツンとついている小さな虫を探すという根気の良さが必要です。また、取り込むには網が必要ですが、たくさん枝がついている中に入れるなど、その扱いもかなり難しいです。

 

*ヤナギは平地でもクワガタ採集に優秀な木で、大きな河川のほとりに生えているこれらの木は絶好のポイントになっていることがあります。

 

さらにヒメオオクワガタには他のクワガタとは異なる習性があって、それは秋口に個体数が多くなる、というものです。だいたい9月頃でしょうか。このあたりに成虫が多くなるのです。もちろんそれよりも早い時期でも居ますが、この時期がもっともよいとされています。

 

また、ヤナギだけではだめで、幼虫はブナの枯れ木に入るので周辺にブナが多く生えていることも必要になります。そのような条件が揃っている場所を探すのが大変かもしれません。いるところでは個体数は多く、木を蹴ったりするなどの昔ながらの方法でも得ることはできるはずです。

 

幼虫や新成虫が入っている枯れ木が見つかれば、そのなかを探ることでも採集することはできます。但し、ヒメオオクワガタが入るのはものすごく堅い木です。スカスカの木にはまず入っていません。枯れ木とはいえ、探すのも一苦労です。こちらの腕のほうが壊れそうになります。このようなことから、なかなか出会うのが難しい虫なのです。