今年ここまでで「2番目」に良い成果を披露したいと思います。
私の手元に、「新しい昆虫採集案内」という3巻セットの古い本があります。1970年頃に、昆虫採集が一大ブームになったらしく、採集地の情報を載せたこれらの本が出版されました。インターネットなどがない時代、この本は多くの昆虫好きに読まれ、参考にされたことと思います。載っている地図は荒く、いささか使いにくい情報源ではありますが。
もう50年、半世紀も前の情報とはいえ、今でも昆虫採集のよい場所として知られているところが数多く載っているのは驚きです。我らが伊豆半島だと、天城山が紹介されています。地域によっては、虫がよく捕れる1本の木が紹介されていて、現在でも残っているものすらあります。
さて、この本の2巻、「西日本」の情報のなか、護摩の段山(和歌山県)の紹介の記事に、忘れられない記述があります:
「シリグロナカボソタマムシという新潟県○○・山梨県○○、それとこの護摩の段山にて各1頭ずつ発見されたという大珍品・・・」
このシリグロナカボソタマムシは、1センチぐらいのタマムシの1種ですが、当時はとてつもない珍品として知られていて、偶然でしか採集できないものでした。
現在では生態が分かったのでそこまでではないものの、それでも屈指の珍品です。ミズナラという、ドングリがなる木の葉を成虫が食べるのですが、成虫が生息するのは木のてっぺんの方で、大木になる樹ですので網などはまず届きません。さらにミズナラはやや標高の高いところに行くと至る所に生えていて、的を絞るのが簡単ではありません。
要約すると、生息密度が非常に低く、手が届かないところにいるので、偶然下の方に降りてきた個体の他は、虫屋ですら驚くぐらいの長~い竿と網を用意して、筋肉を鍛え、一日中ミズナラを掬うとか、そんなことをしないと採れない虫なのです。
ミズナラの大木。これでも超巨大というレベルではないですが。網の直径が60cmです。当然葉っぱを掬うことはできません
私も、自分にはまず採集できない虫で、狙いようがないので一生お目にかかれないだろうと諦めていました。が、なななななんと、7月のある日に、偶然採れちゃいました。
伐採地にある細いミズナラの切り株を夕方になんとなしに見ていたところ、ぺたっとついていたのです。おそらく産卵していたのでしょう。手が反射的に伸びてしまって採集してしまいましたので、標本写真しかありませんが、こんなやつです。
久しぶりに狂喜乱舞しました!
またこの日は、このページで紹介したミスジナガクチキも採集でき(生涯2頭目)、こんなに良い日もあるのだな、、、、と幸せいっぱいの気分でした。実験に使う予定の主目的のカミキリムシは全然だめでしたが。
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ミスジナガクチキムシ です |