2023年7月31日月曜日

メスとオス

 コレクターというものは業の深いもので、珍しい種も最初は1匹でも採れば喜ぶのですが、次第にメスオス両方欲しいとか、大きな個体が欲しいとか、そのようになっていきます。

 

特にメスオス両方揃えたいというのは一般的な要求で、例えばカブトムシやクワガタムシのようにメスオスの差(これを性的二型といいます)が激しいと、両方欲しくなるのは当然でしょう。

 

カミキリムシはメスオスの差がそれほど明確でない種が多いですが、それでも「オスはメスに比べて触角が長くてかっこよい」とか「メスはオスよりも大きくて迫力がある」とか、なんやかんや言っては両方欲しくなるのです。

 

さて多くの動物では、「メスとオスの比率はほぼ1:1」となっています(もちろん例外もたくさんあります)。でも、実際に野外で見られる個体がメスオス1:1とは限りません。なかには、メスとオスの行動パターンが違うので、どちらかが得られにくいものがあるのです。そのような種がそもそも珍しい種であれば大変やっかいで、両方揃えるのに何十年とか、掛かったりもします。

 

カラフトホソコバネカミキリ、という長~い名前のカミキリムシがいます。学名Necydalis sachalinensis から「サハリン」とも呼ばれています。カラフト(サハリン)にちなんだ、細い体型で、前翅が短くなってハチに擬態するカミキリムシ、という意味です。

 

カラフトホソコバネカミキリ です

このカミキリムシは、日本では中部山岳地帯を中心に生息していて、生きたカラマツという木の、樹皮がはげてしまったようなところを幼虫が食べるという、非常に珍しい習性を持っています。そのような特殊な習性故かかなりの珍品で、なかなかお目にかかれる種ではありません。

 

こういうところに産卵します

特にこいつのオスは滅多に採集できないことで有名です。メスは産卵に来るので樹皮がはげたところで待っていたら採れることがありますが、オスを見かけることはまずありません。オスは午前中に飛び回ってメスを探して交尾するらしいのですが、メスは一度交尾するとオスを誘引しにくくなるためか、産卵に来る交尾済みのメスを待っていてもオスには偶然でしか出会えないのです。

 

ということで何とかサハリンのオスを採りたいと、7月のとある日、5時間以上掛けてポイントにたどり着き、早朝から森に入ってうろうろと探索を始めます。9時頃にメスを1つ見つけましたが、既に産卵を始めています。もうオスとの交尾はとっくに終わってしまったようです。その後もメスは見つけられますが、オスはなかなか出てきません。午前中が勝負といわれていますので焦ってきます。疲れも相当溜まります。

 

「まあいいか、サハリンのオスはメスとほとんど変わらないから、まあいらないよね」とか言い訳を始める始末です。

 

森に入って6時間も経過した頃、ようやくオスを見つけました。しかもメスとの交尾中です。ホッとして写真を撮ろうとしたとき、、、カメラの故障に気付きました。写真を撮っても画像が保存されてないのです。

 

こんな滅多にないチャンスにうわ~~~っと慌てますが、仕方ないので、スマフォを取り出して何とか撮れた写真が次のものです。

 

下を向いて交尾中のカラフトホソコバネ

なんとか分かる(かもしれない)写真が撮れました。

そしてオスを確保し、「やはり触角が長くて格好いいな~~~最高!」とか、感想を漏らすわけです。