2023年8月28日月曜日

高標高地のオオトラカミキリ(2)実践編

 前後半に分かれた本ブログ記事は史上初ではないでしょうか。

 

さて、私も高標高地のオオトラを是非ともこの目で見たいと15年ぐらい思っていました。高標高地のものは、黒色の帯が発達してカッコよいという特徴があります。これは是非とも見たいです。

 

ということでず~っと狙っていました。何度も採集に行きましたが、そのたびに敗北し続けました。生息は確実な場所に行きますが、目撃すらせず、成虫の気配を感じることすらないまま年月が過ぎました。いつも採れないので途中であきらめて他の虫を探しに浮気しました。

 

昔オオトラが脱出した痕跡。生息は確実なのですが。。。



そんなこんなで迎えた某年8月某日、絶好の好天気の日がきました。「今年こそは」と気合を入れて朝から森に入ります。午前中はハナカミキリやチョウを観察して過ごします。そうしているうちに午後になり、いよいよオオトラによい時間帯を迎えました。

 

午前中はこのようなチョウで癒やされました

まず、どこで狙うかを考えます。日当たりがよく、歩きやすいところが良いですが、そのようなところは多くありません。目星を付けていたところに移動し、探します。よいと思った場所に入ったものの、しばらくは全く採れませんでした。やはり木が多すぎます。

 

う~ん、と考えを凝らします。オオトラの行動を予想し、居そうなところを絞り、シラビソの木を一つ一つ確認します。そしてついにその瞬間が目の前に、、、

 

産卵中です

見つけました!初めてこの地に足を踏み入れてから15年ぐらい、ようやくです。今日は浮気せずにオオトラに集中してよかったです。

 

でも、これで終わらなかったのです。まだ木はあるので見て回ると、次から次へは大げさですが、ぽつぽつと見つかるオオトラ。。。。。

 

これはやや黄色みが強いかな

こんなこともあるもんですね。

 


上が高標高のもの、下が低標高の産地のもの、確かに上のほうが黒い(というか黄色の縞が細い)です。

 

・・・・・ということで、大成功で終わったこの度の採集でしたが、科学者としては再現性実験をしなくてはなりません。ということで次の週、やはり好天の日、似た条件のエリアを見つけて朝から探索してみました。前回と同じ場所も含め、8時間も歩き回りましたが、、、、、、

 

何の成果も、得られませんでした!

2023年8月22日火曜日

高標高地のオオトラカミキリ(1):知識編

 今年もお盆を過ぎ、虫のシーズンも終盤に向かっています。今年は異常なほど暑く、この暑さで虫も参ってしまったのか、全国的に採集が難しい年であったように感じます。

 

さて、この季節になるとオオトラカミキリのことを意識し始めるようになります。このブログでも数回紹介してきましたが、だいたい9月頭が本番なのですが、、、。

 

オオトラカミキリです

実は、オオトラにはひとつ不思議な習性があります。このカミキリは、北は北海道、南は九州まで広く分布し、しかも標高100mぐらいの低地から、2000mを超えるところにもいる(これを垂直分布といいます)という、異常なぐらい広い適応性があります。

 

この広い分布に関連するのですが、オオトラは北や高標高地では早く出現します。7月の終わりから8月にかけて成虫が出てくるのです。これらの地域では気温が下がってくるのも早いために暑いうちに出るのでしょうが、どのように自分が生息している地域の特徴に合わせた習性を示すのか、不思議です。

 

ちなみにカブトムシでは、北の個体群は南のものよりも成長速度が速いなどで、羽化までのタイミングを調節しているという素晴らしい研究成果があります。ふ化から成虫になるまで2年かかり、季節に合わせて木を複雑に食べることも分かっているオオトラがどのように調節しているのか、興味が尽きません。

 

(参考URL

https://academist-cf.com/journal/?p=13491

 

ということで、オオトラは9月にならなくても、もっと早くから採集できるのです。

 

ちなみに、低地での9月のオオトラ採集は

 

・くっそ暑い

・カやアブ、マダニ、ヤマビルなどの不快なものが多い。クモの巣も大量

・ハチ、特にスズメバチが狂暴化する。樹液が出ている木があったら大量にたかっていて、本当に危ないです

・副産物がほとんどいない。もう季節は終盤戦、低地ではほとんど何も残っていません。オオトラがゲットできないと、コレクションが1mgも増えないことにもなります。財布は軽くなります

 

という、地獄の採集になります。とある知り合いは私に向かって、「普通の神経を持っていたらすることではない」とまで言いました。

 

それに比べて8月上~中旬の標高の高い地域ときたら

 

・暑いといってもそれほどでもなく快適

・蚊とかはそれほどでもない(アブは最近増えていますが、、、)。マダニはいます

・終りに近いといってもまだまだ副産物がたくさんいます。午前中はノリウツギやリョウブといったおしゃれな花を愛でながらハナカミキリや蝶を観察し、午後からオオトラを意識しながらのんびり木に集まる虫を狙えばいい

 

という、天国のような採集を楽しむことができます。

 

副産物の1つ:オオクロカミキリです

でも、高い標高での採集には致命的な欠点があります。虫捕りの成功は、ターゲットの密度が重要です。出会う確率を上げるには、個体の密度(これを個体群密度といいます)が高いほうが良いです。

 

オオトラはモミの仲間を食べますが、高標高地にはモミの仲間、シラビソとか、がこれでもかと生えています。オオトラは特定の木にあまり集まりません。木をひとつひとつ見ていく地道な作業が必要ですが、あまりにも木が多すぎなのです。いくらオオトラが多くても、木のほうが圧倒的に多くて、密度がどうしても低くなります。木を一つ一つなんて到底みてられません。

 

シラビソだらけです

ということで、高標高地ではオオトラに出会う確率自体が低いので、採集難易度はものすごく高いのです。。。。世の中、そんなうまい話はありません。