2020年12月31日木曜日

狂ったもの

もう師走も最終日ですね。いつも通りのんびり研究室で過ごしていますが。。。

今年もまた気候が不思議な感覚で推移したように感じます。秋らしい時期が短く、一方で冬が到来してもそれほど寒さを感じず、、、そのような矛盾したように思いました。といいつつも、この年末年始は寒波が押し寄せて、冬が来たことを実感させる天気予報になっています。

 

そのような不思議な季節変動に伴うのか、先日不思議なものを見つけたので書いておこうと思いました。タイトルが不穏なものになっていますが。。。

 

綺麗なものの代名詞ともいえる花は、年中いずれかのものが見られますが、それぞれの花はその種毎に決まった季節があることが普通です。サクラは春、アサガオは夏、キクは秋、ツバキは冬、というようなことですね。

 

しかしなんらかの条件で、その季節と異なる時期に花が咲くことがあります。それを一般的に「狂い咲き」といいます。言葉は危うさを感じさせますが、別の季節に花を楽しめるので我々にとってそんなに悪いことではないように思います。植物にとっては、やはり花を咲かせるには栄養などが必要でしょうから、それなりの影響があるかもしれません。

 

有名な狂い咲きはサクラで、秋にちらほら咲いて驚くことがあります。といいますか私が狂い咲きを認識したのはまさにサクラが秋に咲いているのを見つけて驚いた経験からでした。今回はサクラではなく、コゴメウツギという、通常春~初夏に咲く花がこんな季節に咲いていました。

 


写真は12月にセンター近くで撮ったものです。この花は小さな白い花が咲いて目立たない上に、光の関係で分かりづらいですが、で囲った所に花があります。

 

ちなみにこの花はあまり有名ではないと思います。が、虫、特に甲虫が大好きな花で、良い季節に咲いていると虫屋さんは必ずチェックするような花なので気づきました。甲虫はこのように、ひとつひとつは小型で目立たない花が房状に集合しているものが大好きです。

 

では皆さん、よいお年を。

2020年11月20日金曜日

苦手だけど見たかった虫(グロ注意!)

 ず~っと紹介したいと思っていた虫がいました。しかし、良い写真を撮るチャンスがなかなか巡ってきませんでした。理由はいくつかあるのですが、単純になかなか出会えなかったためです。 


そもそもその虫については、図鑑などで子供の頃から存在は知っていて「なんじゃこれ、すごいな」と思っていたものの、実物を見る機会はしばらくありませんでした。


初めてその実物を見たのは、こちら下田に引っ越してきてからのことでした。冬に死骸が落ちていたのです。確か車に乗っていて窓から外をみて見つけたんだったと思うのですが、良く気づいたものです。


「伊豆に分布しているんだ」と驚いたのですが、さらに驚いたことにその数年後、月刊むしという雑誌に、その虫の伊豆半島での初記録という記事が載ったんですよ。「私のほうが発見早かったのに!」という気持ちになりましたが、この手のことはよくあることで、記載しなかった私に原因があるのですね。知識は力です。


さて、その後もその虫を下田で時々見ることはありましたが、本当にときどき、偶然出会う感じでした。みつけてもすぐに逃げてしまうこともあって、普段カメラなんか持ち歩かない私は単に見るだけでした。


しかし、最近になってその虫が周辺で増えているように感じるようになりました。帰るときなど、よくちょろちょろと歩いているのに出くわしたり、落ちている死骸に気づくことも頻繁になってきました。ちょっと前までそんなことはなかったと思いますが、、もしかしたら私の目が節穴だったのかもしれません。


それで先日、ようやくその虫の写真を撮ることができたんですよ!夜でしたが、普段逃げ回るのにその個体はじっとしており、私の腕でも撮影できたのでした。

 

さてこれがその虫です!グロ注意ですよ。



サツマゴキブリといいます。成虫になっても翅がなく、また前方が金色に縁取られていて、無駄に装飾に凝った、だがゴキブリです。大きさはいわゆる普通のゴキブリの大きさで、結構大きいです。


私にも苦手な虫はいくつもあって、ゴキブリはかなり嫌いです。家にクロゴキブリが出たら大騒ぎしますし、触れません。サツマゴキブリもあまり好きではないのですが、この独特のカラーリングを図鑑でみて、一度見てみたいとはず~っと思っていました。


なお、サツマゴキブリは主に植物を食べていて、そこまで不潔感があるわけではない、とは頭で分かっていても、でも歩き方とか触角の動かし方とか、とげとげした脚とか、やはり纏っている雰囲気はゴキブリそのもの、当たり前ですけれども。。。


このような虫を育んでいる、下田の自然に感謝します。ありがた迷惑に感じる方も多いでしょうがね。

2020年10月5日月曜日

ホヤが大人になるにはGABAが要る

秋になって虫の活動も一息ついたので、たまには真面目な話を投稿しましょう。もちろんいつも真面目ですが。 

この前、ちょうど新型コロナウイルス問題がクローズアップされてきた時に、研究室からひとつの論文が出ました。この論文の結果は我々にとっても、今後の研究の方向性を決める重要なものでしたので、論文が掲載されてホッとしました。 

最近、私たちはホヤの変態、つまりホヤがどのように大人になるかに特に興味を持って研究しています。ホヤは孵化したときは「オタマジャクシ」に似た形で、活発に遊泳します。しかし、この活発な時期はすぐに過ぎ去り、大人になったホヤは岩とか、様々なものにくっついてそこから動かない生活を送ります。
ホヤの幼生です。左を向いています

ホヤの成体です。10匹ほどがシャーレにくっついています。

 まるで大人になると怠惰な生活になるようだな~と思っていますが、実は自然界で動かないというのはかなり難易度が高い(はずの)ことで、少なくとも餌が向こうからやってくるとか、捕食者から身を守る術とか、子供を作る相手をどうするかとか、このあたりの問題をクリアしなくては、単に食べられたり、飢えたり、子供ができなくて、詰むわけです。つまりホヤは怠惰なのではなく、これらの仕組みを獲得したスーパー生物なのですよ!

私たちがホヤの変態に興味を持つのは、このように単に体の形が大きく変わるだけでなく、生活の様式までもががらっと変わるという特殊性に惹かれてのことです。もちろん他にも科学的ないろいろな理由がありますが、大きくはそのような理由です。 

さて今回の論文では、ホヤが変態を始めるときに、体の中でどのようなことがきっかけとなって変化が生じるのか?ということを調べたものです。分かったことは、タイトルと同じですが 

 「ホヤの変態のときにはGABAが要る」

 というものでした。GABAは、私たちの生活のなかでもたまに聞く物質ですよね。GABA配合とかいうやつです。それと全く同じです。GABAは、私たちの脳などでも働いているものすごく重要な化学物質です。 
ホヤの変態にGABAが要ることが分かってから購入してきました。もちろん食べました。

GABAが重要なのは、神経細胞などに対する作用にあります。動物が何か行動などを起こすとき、神経が興奮することで行動などを起こします。しかし神経が興奮しっぱなしだったら、行動し続けてしまって疲れてしまったりします。興奮を止める仕組みが必要です。それがこの「GABA」なのです。  

ホヤは幼生のときに、泳ぎながらくっついて大人になる場所を探します。見つけると(それほど能動的なものではないかもしれませんが)固着します。その固着が引き金となって変態を始めるのですが、その際に体中に「くっついたから変態しなさい」という命令を送る分子がGABAなのです。なので、GABAがないホヤを作ると、いつまでも幼生のままで変態せず、大人にならないのです。 
実験的にGABAが働かなくなったホヤ。幼生のままです。

科学的かどうかはわかりませんが、GABAがホヤの変態に必要だと分かったとき、「ホヤも大人になるときには落ち着かないとだめなんだな~」と感じました。 

もう少しホヤとGABAの関係を詳しく書いた記事が、例えば以下のところで紹介記事を書きました。もしよければみてみてください。 

 https://academist-cf.com/journal/?p=14437

2020年8月24日月曜日

嫌われ者?

今日は大事な仕事が一つ終わったのでほっと一息ついています。

 今年は7月終わりまで梅雨の長雨が続いて採集ができず、ようやく梅雨が明けたと思ったら異常なぐらいの暑さですぐに虫が居なくなってしまった、そんな印象の夏でした(まだ夏ですが)。

この前なんか、あるところに採集に出かけたのですが、午前中にも関わらずやたらと汗をかくな~と思ったんですよ。森を出て移動しようと車を走らせると、電光掲示板に「38度!」って出てました。そりゃ暑いですわ。

そういうわけ?で、今年は本当に虫が少ない真夏のシーズンを迎えています。いつもならこの時期に得られる種も、ほとんど見られないとか、現在少し進めている実験の材料すら入手できないとか、そんな困った状況になっています。

さて、そんな辛いことばかり書いてもつまらないので、紹介したいとずっと思っていた虫の写真を貼り付けようと思います。これです


これは、「アカスジキンカメムシ」という、カメムシの仲間です。カメムシというとだいたいが「臭い」という一言で切って捨てられるような、いわゆる嫌われている虫なのですが、このように大変綺麗な種が多いのです。特に「キンカメムシ」というグループは、文字通り金ぴかきらきらの種が多くて大変美麗です。アカスジキンカメムシもかなり綺麗で、愛嬌のあるころころした体型と共に、なかなか良い虫だと思います。

また!このアカスジキンカメムシは、なんと余り臭くないのですよ。臭い臭くないは人によって異なるとは思いますが、顔を背けたくなるような臭いではなく、むしろ良いにおいではないかと思います。綺麗だし臭くないし、なかなか良い虫だと思います。

アカスジキンカメムシはあまり珍しくはなく、例えば筑波大学本学の中にはたくさんいます。ミズキなんかによく付いているので、注意して見てみると発見できるかもしれません。幼虫は全く異なる体色をしていますが、そちらも綺麗なんですよ。

*カメムシはセミに近い仲間です。セミになると、幼生が歩いていると「ちゃんと羽化してね」と応援したくなる方も少なくないように思いますが、カメムシだと嫌われてしまう、、、まあ理由は明白で、確かに臭いのきつい種だと「うわっ」てなりますね。ちなみに私は、マルカメムシという、たくさんいる小さめで茶色のカメムシの臭いが苦手です。