2022年2月21日月曜日

2022年は寅年です ~トラの名前~

 今年の干支、トラカミキリの話の続きを書きましょう。

 

トラカミキリの仲間には、よく考えたら変わった名前を持つものがあります。

 

まずは人名シリーズ・・・それぞれ、

 

ヨコヤマトラカミキリ

 

ハセガワトラカミキリ

マツシタトラカミキリ

 

ニイジマトラカミキリ

 

です。本州で見ることができるこれら4種には、このように人の名前が付けられています。確か、昆虫の分類に貢献した横山、長谷川、松下、新島の各研究者にちなんで名づけられたのだったかな。

 

このなかでは、ヨコヤマとハセガワがかなりの珍品です。ハセガワは特に、野外で成虫を見る機会はなかなか無い種です。このあたりでは、富士山周辺にいます。長谷川さんが採れちゃった!とか、横山さんが採れた~むふふ、とか言っています。

 

次、これ、何の変哲も無いトラカミキリに見えますが、名前、分かりますか?


なんと、「トウキョウトラカミキリ」です。昔は東京にたくさんいたのでしょうか。現在ではこちらもかなり珍しい種で、見つけると嬉しくなります。「人」の字をイメージさせる模様を持っています。

 

さて、次はこの3つです。

 


これはキイロトラカミキリです。まあ分かるかな。

 


これがシロトラカミキリ。えっ?確かに白い部分もあるけど。。。。

 


そしてこれが・・・・

 



クロトラカミキリ

 

はあっ?どこがやねん!

 

 

ちなみにキイロとシロは優占種といってもいいかな、というぐらい多い種ですが、クロトラカミキリはかな~り珍しいです。数年前に学生さんに、「カミキリが居たので写真に撮りました!」と言ってみせてもらったらクロトラカミキリだったことがあって、「それでその虫はどこにあるんだい」と聞いたら、「いや、採ってませんけど」と言われてしまいました。

 

さて、クロトラカミキリにはそっくりさんがいます。ほぼ同じ条件で撮影したものですが、、、、


 

左がクロトラなのですが、右はエグリトラカミキリといって、別種です。エグリさんはクロと異なり、トラカミキリを代表する勢いの優占種です。下田にもいます。でも、最近見る機会が減っている気もします。

 

次のそっくりペアはこれらです。

 


左が「スギノアカネトラ」、右が「トガリバアカネトラ」です。両方とも、複雑な模様をしていてかなり綺麗です。似ていますが、習性やレア度はかなり異なります。トガリバアカネトラは普通にいる種で、幼虫は広葉樹の枯れ木を食べます。スギノアカネトラは名前の通りスギの、しかも生木を食べます。害虫とされていますが数はかなり少ないようで、採集するのは簡単ではありません。センターにたまに飛来すると嬉しくなります。

 

両者は本当に似ているので、カミキリを集めている人でも、自信満々に「スギノアカネトラです!」といってトガリバアカネトラを示したり、逆のことをよくしているのをみかけます。

 

最後のペアはこれです。

 


左が「シロオビトラ」、右が「シラケトラ」です。名前まで似ています。これらは両方とも広葉樹の枯れ木に集まるなど、習性もそれなりに似ているかな。よーく見てください。シロオビトラのほうが頭部(ではなくて本当は前胸ですが)が丸くて太いです。また全体的に光沢がありません。シックでかっこよいと覚えるとよいです。

この2つは本当に似ているのですが、珍品度が大きく違っています。シラケトラは下田にもいて「ふ~ん、シラケか・・・」というぐらいのものですが、シロオビトラはなかなか見られない種です。私も出会えたのはわずか数回です。そのためカミキリを集めている人が「シロオビトラを採りました!やったね」といってシラケトラの写真を出しているのをよく見ます。「そ、それは違うんや」と、なんか申し訳ないような気になってしまいます。ネットでシロオビトラで検索しても、名前に騙されてはいけません。