「このHPでは研究の話をあまりしない」と言っていた先生ですが、最近少し考えが変わってきたようです。
「ホヤのことや科学の情報を、簡単でよいから発信するようなことも重要だろう」
と考え直したとのことです。先生は珍しい虫などの紹介をしていますが、これらについても、
「身近な自然のなかに、どれだけ不思議な生物であふれているかを伝えたい」
ということから始めたそうです。
ということで、少しアカデミックな話題を提供しましょう。
決して蟲ネタが尽きたからではないのだ。
つい先日、研究室から論文がひとつ発表になりました。以下です!
Pubmedという研究論文のデータベースにリンクを貼っていて、要旨を読むことができます。
ドーパミンは我々の脳内で様々な機能をもつ重要な化学物質で、神経細胞から放出されます。インターネットで調べてみると快楽を感じたりとか、恋するときに働くとか、なかなかロマンチックな?機能がクローズアップされていますね。
そのドーパミンを作る神経細胞は、(そんな活動とは無縁のようにみえるぼーっとした)ホヤにもあります。そのドーパミン神経細胞が、発生過程でどのように形成されるか、を明らかにしたという内容です。
より具体的には、ドーパミン神経をホヤが作るときには、Ptf1aとMeisという、2つの転写因子が必要で、2つのタンパク質の協調的働きによって、神経系の細胞がドーパミン神経へと分化する、ということだそうです。
まあそのあたりのメカニズムは専門的な話になりますが、今回のキーとなる話題は「ホヤにもドーパミン神経があるのだ」ということを宣伝したい、ということだそうです。
じゃあ、ホヤも快楽を感じたり恋したりするのですか?
うーん、実はホヤのドーパミン神経の機能は分かっていませんが、哺乳類でもドーパミン神経は快楽だけに働くのではなく、それとは独自の機能も持っているので、また別のことに働いている可能性があるんじゃないか、ということだそうです。
今回の研究でドーパミン神経がないホヤを得られるようになったので、そのようなホヤを調べることで、ホヤにおいてドーパミンが何をしているのか、が解明されるでしょう。