2022年3月29日火曜日

D-セリンに関する論文がでました

 長かった冬もようやく明けてきて、春が到来しました。この週末ぐらいでぐっと季節が進んだようで、各種の花が咲き誇っています。

 


一方でこの季節は別れの季節でもあり、様々な方々がセンターから旅立っていきました。新しいところでも活躍をしてもらいたいと思います。

 

少し前のことになりますが、大きめの論文が出たのでプレスリリースをしました。ホヤにおけるD-セリンという物質の機能を明らかにした、というものです。詳細は以下のリンクにある記事をご覧ください。

 

https://www.tsukuba.ac.jp/journal/biology-environment/20220312040000.html

 

簡単に紹介すると、生物の体を形作るタンパク質はアミノ酸が集まったものです。アミノ酸にはグリシンを除いて、L体とD体という、同じアミノ酸にも関わらず互いに鏡像の関係にあるフォームがあります。例えばグルタミン酸というアミノ酸にも、L-グルタミン酸とD-グルタミン酸があるのです。

 

生物の体はなぜか、ほとんどL-アミノ酸ばかりで作られています。どうしてかは分かっていません。しかしながら、D-アミノ酸がわずかですが存在していて、重要な機能を持つことが分かってきています。その一つがD-セリンです。このアミノ酸は我々の脳内の情報伝達に使われているほか、皮膚においても機能していることが示されてきています。

 

最近の私たちの研究から、ホヤもD-セリンを持っていることが分かりました。詳細に調べたところ、ホヤのD-セリンは皮膚において働いていて、特にホヤが大人になる変態に必要であることが分かったのです。この一連の研究を纏めましたので、興味のある方は読んでいただくと嬉しいです。論文は以下にあります。

 

https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abn3264?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%20%200pubmed