2023年8月22日火曜日

高標高地のオオトラカミキリ(1):知識編

 今年もお盆を過ぎ、虫のシーズンも終盤に向かっています。今年は異常なほど暑く、この暑さで虫も参ってしまったのか、全国的に採集が難しい年であったように感じます。

 

さて、この季節になるとオオトラカミキリのことを意識し始めるようになります。このブログでも数回紹介してきましたが、だいたい9月頭が本番なのですが、、、。

 

オオトラカミキリです

実は、オオトラにはひとつ不思議な習性があります。このカミキリは、北は北海道、南は九州まで広く分布し、しかも標高100mぐらいの低地から、2000mを超えるところにもいる(これを垂直分布といいます)という、異常なぐらい広い適応性があります。

 

この広い分布に関連するのですが、オオトラは北や高標高地では早く出現します。7月の終わりから8月にかけて成虫が出てくるのです。これらの地域では気温が下がってくるのも早いために暑いうちに出るのでしょうが、どのように自分が生息している地域の特徴に合わせた習性を示すのか、不思議です。

 

ちなみにカブトムシでは、北の個体群は南のものよりも成長速度が速いなどで、羽化までのタイミングを調節しているという素晴らしい研究成果があります。ふ化から成虫になるまで2年かかり、季節に合わせて木を複雑に食べることも分かっているオオトラがどのように調節しているのか、興味が尽きません。

 

(参考URL

https://academist-cf.com/journal/?p=13491

 

ということで、オオトラは9月にならなくても、もっと早くから採集できるのです。

 

ちなみに、低地での9月のオオトラ採集は

 

・くっそ暑い

・カやアブ、マダニ、ヤマビルなどの不快なものが多い。クモの巣も大量

・ハチ、特にスズメバチが狂暴化する。樹液が出ている木があったら大量にたかっていて、本当に危ないです

・副産物がほとんどいない。もう季節は終盤戦、低地ではほとんど何も残っていません。オオトラがゲットできないと、コレクションが1mgも増えないことにもなります。財布は軽くなります

 

という、地獄の採集になります。とある知り合いは私に向かって、「普通の神経を持っていたらすることではない」とまで言いました。

 

それに比べて8月上~中旬の標高の高い地域ときたら

 

・暑いといってもそれほどでもなく快適

・蚊とかはそれほどでもない(アブは最近増えていますが、、、)。マダニはいます

・終りに近いといってもまだまだ副産物がたくさんいます。午前中はノリウツギやリョウブといったおしゃれな花を愛でながらハナカミキリや蝶を観察し、午後からオオトラを意識しながらのんびり木に集まる虫を狙えばいい

 

という、天国のような採集を楽しむことができます。

 

副産物の1つ:オオクロカミキリです

でも、高い標高での採集には致命的な欠点があります。虫捕りの成功は、ターゲットの密度が重要です。出会う確率を上げるには、個体の密度(これを個体群密度といいます)が高いほうが良いです。

 

オオトラはモミの仲間を食べますが、高標高地にはモミの仲間、シラビソとか、がこれでもかと生えています。オオトラは特定の木にあまり集まりません。木をひとつひとつ見ていく地道な作業が必要ですが、あまりにも木が多すぎなのです。いくらオオトラが多くても、木のほうが圧倒的に多くて、密度がどうしても低くなります。木を一つ一つなんて到底みてられません。

 

シラビソだらけです

ということで、高標高地ではオオトラに出会う確率自体が低いので、採集難易度はものすごく高いのです。。。。世の中、そんなうまい話はありません。

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