2024年5月30日木曜日

ヤマシャクヤクとフタスジカタビロハナカミキリ

今回はこの時期ならではの清涼感のある話題を。 

 関東付近だと5月頃に、ヤマシャクヤクという可憐な花が咲きます。名前の通りシャクヤクの一種で、自然に生える原種のひとつです。シャクヤクといえば綺麗なものの代表格で広くご存じの方も多いでしょう。結構大型で目立つ、人気も高い花です。
このヤマシャクヤクですが、綺麗な花びらが汚くなっていることがあります。
このようにかじられた痕がついていたりします。このようになっていると、フタスジカタビロハナカミキリがいることがあります。
このようにそっと花を覗き込むと、ひっそりとこの美しいカミキリが中に潜んでいたりします。1センチを超える、と書くとあまり大きくないように聞こえますが、カミキリムシにしては大型の方です。天気の良い日には、ぶんぶんと飛び回って花に飛びついたり、盛んに後食している姿を見ることができます。
このカミキリはヤマシャクヤクに強く依存し、成虫もその花を食べますし、幼虫もこの植物の根を食べるとされています。そのためか、非常に緻密な色彩をしています。体を覆う翅はクリーム色なのですが、頭部や前胸、触角や脚の先端は黒く、これはヤマシャクヤクのおしべの色に合わせたものだと考えられます。

脚はまるで靴下を履いているようです。単品でみれば白と黒のコントラストがはっきりして非常に美しく、目立つように思える体色ですが、ヤマシャクヤクの花の中だと意外に目立ちません。
このカミキリムシは、当然ながらヤマシャクヤクがないといないので、この植物があることが前提条件となっています。ヤマシャクヤク自体が珍しいものなのでおいそれとみつけることができないのですが、分布しているところでの個体数はそこまで少ないものではありません。

 問題は出現時期で、ヤマシャクヤクが咲いていることが虫を見つける前提となるのですが、ヤマシャクヤクの開花期間自体が大変短いので、きっちりと時期を合わせることが大切になっています。最近は温暖化の影響かはわかりませんが、開花と出現時期が早くなる傾向があるので、行ったら既に花もカミキリも終わっていた、なんてこともよくあります。

 自然が好きな方はきっと気に入る虫なので、ぜひともこのフォトジェニックな虫を探してみてはいかがでしょうか。

2024年5月2日木曜日

南の変わった虫

とある理由で、あっという間に4月が終わっていました。まるで天国にいるような気分でした。論文をプレプリントサーバーに投稿したり、実験したり、採集に久しぶりに出かけたり、出張したり、充実した一ヶ月でした。

 

さて、出張先で変わったものに出会ったので、それを紹介してお茶を濁したいと思います。

 

 

下を向いています

 

これはダンゴムシではありません。しっかりよく見ると、二本の長い触角が生えています。ダンゴムシのものとは全く異なります。

 

このように細くて長い触角を持つ虫、皆さんの周囲にも居ると思います。そうです、これはれっきとしたゴキブリの仲間で、「マルゴキブリ」といいます。

 

見かけがダンゴムシに近いだけではなく、触るとダンゴムシと同じように丸くなるのです。初めて見たときは私も驚きました。驚きすぎて、採集して標本にしちゃいました。今回も、1匹だけ標本を作りました。


ゴキブリだけだと味気ないので、きれいどころも少し紹介しましょう

オキナワチョウトンボ、かな

リュウキュウアサギマダラ、かな

オキナワモンキカミキリ。いくら何でも早すぎます

このような綺麗な生き物が普通にいる環境がいつまでも残っていてほしいものです