2021年9月8日水曜日

良い思いをすることもある

人がほとんど出入りしないこのブログですが、毎年、この時期になりますと閲覧件数が上がるページがあります。日本のカミキリムシのなかでも屈指の人気種、オオトラカミキリのページです。やはり皆さん気になるようですね。トラカミキリとしてはあり得ないぐらいに大きな体、派手なスズメバチのような体色、なかなか採れないなど、虫に興味が無い方が見ても「これすごい」と思うような虫です。そりゃ人気がでますよ。

 

しかしながら、今年はこの虫を採りたい方には非常に苦しい状態になっているようです。まずは新型コロナウイルス感染症の影響で、なかなか採集ポイントに行けない状態が続いていることです。早く収束するといいのですが。

 

これに追い打ちをかける事態として、9月になってからの急な冷え込みがあります。普通はまだまだ暑い時期ですが、今年はぐっと気温が下がってしまい、関東で30度を超える日が全然ありません。オオトラカミキリの採集効率は特に気温に左右され、高い方が望ましいので、これは良くない状態です。

 

こんな状態なので、今年は写真と共に過去のむふふな経験を思い出すことで、心だけでも楽しむしかありません。。。

 

今までで一番お気に入りの個体

オオトラカミキリを採るには、もちろん生息している地域で、成虫が出てくる時期(低地ならばちょうどこの頃です)に食樹であるモミなどの林に行きます。天気が良く、出来るだけ暑い日が良いです。朝から夕方まで、ず~~~っとモミの木を上から下まで眺めて探すのです。ダイエットに良い採集です。場所によってはハチ、蚊、アブ、ヘビ、マダニ、ヒルなど、不快な動物にもたくさん出会います。

 

努力して、なお運が良ければ、一日に1~数匹のオオトラカミキリに出会うことが出来るかもしれません。多産地でも、そんなにたくさん採れるものではありません。また、ほぼ全てメスです。産卵するために木の下の方まで這い回るので、メスしか採れないのです。

 

運がよければ目の前の高さをとことこ歩いています

こんな大変な思いをして採集するオオトラですが、たまにはラッキーなことが起こります。例えば:


・一日に5匹も採れた

・並んでいる2本のモミの木のそれぞれにオオトラがいた

・モミの木を眺めていたらオオトラが目の前に飛んできた

・木を揺すったらオオトラが落ちてきた

・林を歩いていたらオオトラの残像が目に焼き付いたので、目の前の木をよく見たら本当に付いていた

・林に入って見た最初の木にオオトラがいた

 

などなどです。でも、次に書く経験は、忘れられるものではありません

 

もう7年も前のことです。その日は私には珍しく知人と一緒に採集に行きました。ただ気温がいまいち上がらず、コンディションはあまり良くない予報でした。

 

一緒に来ていた知人はまだオオトラを採集したことがなく、内心は意欲を燃やしていたと思います。その方に私はレクチャーをしながら舗装道路を歩いて採集ポイントへ向かっていたのです。

 

私が、「オオトラはね(どんくさいから)、たまにポイント近くの道に落ちているらしいですよ」といいながら、下を向いて歩いていたちょうどそのとき、、、

 

本当にオオトラが落ちていたのです。私が歩いている側に。

 

さっき、ここ車で通ったよね。良く踏まなかったものだ。

 

ということで、同行者には悪いな~と全然思ってないですが、少し得意げになりながらオオトラを拾ったのでした。なかなか大きな、3センチほどあるメス個体でした。それ以前にも以降にも、こんな形で拾ったことはありません。

 

その日は予報通り気温が上がらず、同行者は採れませんでした!ところが私はなんと、もう1匹を得て、また副産物の珍しいカミキリまで採って、大満足で帰宅したのでした。気温が高い方が良いと書きましたが、虫が活動する気温なのかかどうか、それが一番重要なんだと思います。

Mgが無くても発色

 ルーティンでずうっと長いことやっている実験のプロトコール、10年に一度くらいはメーカーが更新していないか、確認してみてもいいかもしれません。


mRNAの発現局在を調べるin situ hybridizationという実験では、NBT/BCIPで発色させ検出する場合、アルカリフォスファターゼという酵素の働きを利用します。

酵素が働くには2価の陽イオンが必要、ということで古くからのプロトコールでは発色液にMgCl2を添加していました。

Rocheのハンドブック(4th ed, 2008?)でもMgCl2は添加することになっています。


ところがネットにあるRocheのNBT/BCIP stock solutionの取説(Ver8, 2016)をみてみたら、DIGシステムでのNBT/BCIP発色にはMgCl2無しで良いとなっています。

従来の使用試薬やプロトコール条件下で、MgCl2無しで実際にやってみたところ、発色できました。しかも析出物が出ず、いつもより綺麗。


目からうろこでした。