前回のブログで紹介したハイイロハナカミキリの仲間は日本には3種類もしくは4種いることになっています。そのうち本州にいるのは:
ハイイロハナカミキリ
ニセハイイロハナカミキリ
エゾハイイロハナカミキリ
です。どれもこれも非常に似ていて、図鑑をにらめっこしても区別はそんなに簡単ではありません。なお上に書いた和名は少々分かりやすくしています。
このうちニセハイイロハナカミキリが本州では最も容易に出会うことが出来るでしょう。分布も広いし、標高も低いところから高いところまでいます。前回の写真もこの種です。
ハイイロハナカミキリはやや局所的で、標高の高いところで見かけることがあります。ニセハイイロハナカミキリに似ていますが黒が目立ち、白い部分もクリーム色、という感じです。
エゾハイイロハナカミキリは名前の通り北海道を中心に分布する種ですが、本州でも長野県辺りのごく一部でのみ分布していて、北海道の一群とは別の亜種とされています。亜種名からシナノエゾハイイロハナカミキリ、ともよばれています。これは、日本が寒かったときに分布を広げた虫が中部山岳地帯に取り残されたのだとも考えられています。すごいですね。
このシナノエゾハイイロハナカミキリは他の2種と対照的に大変珍しい種で、一部にしか分布しないことも理由の一つですが、依存する木が決まっていて、「トウヒ」という聞き慣れない木の枯れ木を主に幼虫が食べますので、この木に成虫も集まります。ニセハイイロハナカミキリなんかは、低地ではアカマツ、高地ではシラビソなどモミの仲間など、針葉樹であれば幅広く食すのと対照的です。
トウヒはエゾマツの変種らしくて、こちらも日本が寒かったときの名残だと言われています。そう考えるとシナノエゾハイイロハナカミキリがトウヒに依存するのも分かるような気がします。氷河期以降ず~っと、そのような関係性を保って本州のほんの一部で生き残ってきたのです。すごいですね。
このような習性からこのカミキリムシに出会うには、産地に赴いて、トウヒのちょうど良い具合の枯れ木を歩いて行ける範囲に見つけるという剛運が必要になります。トウヒはそんなに多い木ではなく、そのちょうど良い枯れ木を見つけるのは簡単ではありません。針葉樹は似たような樹皮を持った木が多くて区別が難しいのに、枯れ木となると葉も余り付いていないので木の同定すら大変です。枯れ木があっても、古かったりすると全然だめです。
私も長年の宿題になっていましたが、今年、ようやく出会うことができました。そのときの様子がこちらですが、ハイイロハナカミキリの仲間は羽化した後、成虫で越冬します。ですので冬でも成虫に会える楽しみがあります。
他の種とどこが違うのか?と問われれば大変悩むぐらい似ていますが、
分かりやすいのは、この部分の中央の筋が3種のなかで一番太くてはっきりしているのが特徴です!うーん、分かりやすいのはそれだけですね。あとは平均的に大型で、白っぽさが目立つところでしょうか。まあ、そのような微妙な違いに気付くのが面白いのです。