2024年10月28日月曜日

ハイイロハナカミキリの仲間

 おおよそカミキリムシに見えない独特の形態を持っているハナカミキリの一群です。属名Rhagiumから、「ラギウム」とよばれています。

 

ハイイロハナカミキリの1種です



このように、触角が短くてずんぐりとしていて、いかにも原始的、といった雰囲気を纏っています。なお、本当に原始的かどうかは分かりませんが。

 

ネットに入ってきた個体


ハナカミキリという名にも関わらず一般的には花にはあまり集まりません。マツの仲間の花があれば来ることがあります。

 

なじみのない方が見たら、カミキリムシとは思えないのではないでしょうか。そのような独特の形態から、カミキリムシの収集を始めた際には欲しくて欲しくてたまらなくなったのはよい思い出です。

 

実はこのグループは採集に慣れてくると、天気の良い日に針葉樹の新鮮な倒木や伐採木にわんさかと集まってくることがあり、出会うのはそれほど難しくはなくなります。


今年も初夏の1ヶ月ほどの間、他のカミキリがほとんどいないなか、この仲間だけがたくさん見かけられました。

 

2024年9月27日金曜日

科博の昆虫展に行ってきた件

 なんか、youtube動画のようなタイトルになってしまいました。

 

現在、国立科学博物館では「昆虫マニアック」という、科博や関連のコレクションをこれでもか、と使った壮大な展示が開催されています。正直、お勧めです。

 

私は2回も行ってきましたが、一通り見終わる頃には疲れ果ててしまうぐらいの展示量で、質も素晴らしいものでした

 

一部を紹介しましょう

 


これがポスター。周知にも使われています。

 


展示はテーマ毎にいくつかのコーナーに分かれています

 



トンボがいるコーナー。トンボは標本を作るのが大変難しいですが、さすがに綺麗です。



世界最大のトンボ、テイオウムカシヤンマがいます。日本の最大種のオニヤンマ(下)より巨大ですが、オニヤンマも負けていません。

 


もちろんゴキブリの展示もあります。こいつは下田にもいますね。

 


セミも多種類が展示されていました。世界最大のセミ、テイオウゼミかな(テイオウとかコウテイとか、大きなものには似た傾向の修飾が付きますね)

 


今年大発生した、アメリカの素数ゼミ。たくさんいました

 


バッタやカマキリの展示。それにしてもすごい形です。展足もばっちりです

 


日本のオオスズメバチが世界最大のスズメバチなのは有名な話です。世界にはもっと巨大なハチもいます。

 


某漫画で有名になった?パラポネラ。刺されるとすさまじく痛いらしいです。針がすごく目立っています。ちなみに、アリは飛ばないハチです。

 


展示室には、ところどころこのようなオブジェが立っています。これは寄生蜂ですね

 


ガとチョウのコーナー。これらはアゲハチョウの仲間ですが、派手ですね。3匹はいわゆるトリバネアゲハの仲間で、右下はカラスアゲハに近い種かな。

 


世界を代表する美しいチョウ、左上がアグリアス(ミイロタテハ)、下がモルフォ。両方ともアマゾンにいます。

 


派手さならばガも負けていません。ちなみにチョウは、ガのなかの一グループに過ぎません。

 


某映画で有名になった(クロ)メンガタスズメ。日本にもいます

 


こんな小さなガも展翅がばっちりです。毛で翅を押さえたりします

 


難易度が高い、幼虫の乾燥標本もありました。ちょっと苦手です

 


昆虫だけでなくて、クモや多足類のコーナーもあります

 


最近沖縄から記載されたばかりのリュウジンオオムカデ。水中に潜って餌を探します。大きいとは聞いていましたが、すさまじい巨大さです

 


さてさてようやく甲虫のコーナーです。じっくり見ていきます

 


人気のあるカブトムシやクワガタムシには、このような遊び心のある展示があります


 

ウェストウッディオオシカクワガタかな。かっこよいですが、値段はかわいくありません。

 


南アフリカの異形クワガタ、コロフォンとよばれています。どれも珍品だそうです

 


軍神マルスから名前をとった、マルスゾウカブト。巨大で大変かっこよいカブトムシです。

 


有名になったプラチナコガネ。ちなみに標本のお値段もプラチナ級

 


日本のヒゲコガネもいました

 


世界最大のカミキリムシのひとつ、タイタンオオウスバカミキリ。学名がTitanus giganteusで、簡単に言えば、でかい・でかい、という意味になります。

 


これまた有名なテナガカミキリ。現地ではそんなに珍しくないようです。

 


オスの前脚が長いことで有名なテナガコガネ。日本にも1種います。

 


ホウセキゾウムシ。名前に納得する美しさです。

 


固くて有名なカタゾウムシ。派手ですが、、、

 


日本にいるカタゾウムシは真っ黒です。日本らしい、、、かな

 


研究者から寄贈された標本もあります。これはアリヅカムシ。。。本体は見えないくらい小さいです。良く集めたものです

 

とまあ、こんな感じで量・質共に素晴らしい昆虫がこれでもか、と紹介されています。標本だけでなくて生態とかも解説されているので大変勉強になります。こんな質の高い展示が近くで開催されるとは、東京は首都だけあって良いところだと思います。興味がある方は是非とも足をお運びください。

 

(この展示の影響か、同じく東京で開催された今年の標本即売会は例年にない大盛況だったそうです)

 

2024年8月27日火曜日

カラフトホソコバネカミキリ2024 ~リベンジ編~

 

去年、せっかく交尾中の個体を複数見つけたのに、カメラの不調でよい写真が撮れなかったカラフトホソコバネカミキリ。今年はサンプルが必要になったこともあり、交尾中の良い写真を求めて再チャレンジすることにしました。

 

(去年の記事はこちら

 

このカミキリは木からメスが出てすぐに交尾を済ませ、その後、メスは産卵に木を訪れますがオスは寄り付かなくなります。なのでオスは大変採りづらく、発生初期に行くことが交尾中の写真を狙うためには必要です。確実に雌雄の写真をものにするために、去年と同じ時期、数日早くにポイントに行く計画を立てました。

 

「去年は異常に暑い年だったから早く出て交尾を済ませてしまっていたけど、今年はさすがにそこまでではないだろうから、ちょうどオスもメスも羽化脱出してくる頃になるだろう」

 

と準備万端だと思っていましたが・・・・・

 

なにこの暑さ!6月も暑かったですが7月に入って急激に暑さが過激になり、虫の発生時期が異様に早くなってしまいました。早く出現して、さっさといなくなります。去年より暑くなるとは、まったく想定外でした。

 

ということで、結局出遅れ感が満載の状態で行くことになりました。季節の進行ばかりはどうしようもありません。それにしても異常だった去年を上回る暑さになるとは、驚くばかりです。

 

ついでに予定日の数日前に、知人から「今年は非常に数が少ないようでぜんぜんだめだった・・・」というありがたいご連絡。絶望感あふれる片道300km越えの採集旅行となりました。

 

といっても山は楽しくよいことばかり期待されるので、現地には6時には到着してしまいました。当日、天気予報では曇~雨でしたが結構晴れており、悪い天気予報もあって登山客などもほとんどいなくて静かでした。

まあまあ良い天気

 

早速夜露に濡れた森に入ります。まあそんなに早く入らなくてもいいのですが、待っていても仕方がないので歩き始めます。足下をずぶ濡れにしながらよい状態の木を探しますが、去年よりも虫が見つかりません。数が少ないのはその通りのようです。

 

こんなところにいるはずですが。。。

10時近くになって、ようやくメスが見つかりました。産卵中で、既に交尾は済ませているようです。その後もちらほらメスは見つかりますが、オスは一向に姿を現しません。

 

産卵中のカラフトホソコバネ、メスです

午後になりもうあきらめモードになった13時ごろでしたが、まったく期待していなかった木を覗き込んだ時、ようやく交尾中のペアが見つかりました。あきらめなくてよかったです!やはり虫捕りは忍耐との勝負です。今回はカメラも無事で、おそらくこれが今日見つかる唯一のペアでしょうから、夢中でシャッターを切りました。

 

みつけました!

アップの写真も撮りました

と、異常気象に振り回されつつもなんとか任務を達成し、ほっとして長~い距離を運転して帰りました。

 

振り返ってみると、このときは真夏のシーズン開幕を楽しめたのですが、まさかこの酷暑がず~っと続くとは、思ってもみませんでした。

 

2024年7月29日月曜日

チャイロヒメコブハナカミキリ

 地味~なカミキリムシで、茶色なので茶色の木の幹にいると写真撮影が難しいです(写真のクオリティが悪い言い訳)。久しぶりに出会いました。なかなか珍しいとはいえ、極珍品というほどではないのですが、なんと10年ぐらいぶりでした。

 

これはメスです

漢字で書くと「茶色姫瘤花天牛」です。茶色くて、やや小さくて、瘤があるハナカミキリです。花には頻繁には来ませんが、たまに訪れます。

このカミキリはカツラという木の大木、その根を幼虫が食べるといわれています。ですので成虫もカツラの大木に集まります。

 

上の個体がいたカツラの大木。直径1mは越えていたかも

そのためこのカミキリに出会うには、まず「カツラ」という木を見つける必要があります。変わった名前ですが、そんな木があることすら知らない方も多いのではないでしょうか。

 

カツラの葉はハート型です

実はカツラの木は筑波大学のキャンパスにはたくさん生えています。植栽かな?分かりませんがあちこちにあります。でも大学では標高が低すぎてチャイロヒメコブハナカミキリはいません。もう少し高標高のところに行く必要があります。写真撮影した個体も1500mぐらいのところで見つけました。

 

カツラの木には面白い特徴があります。落ち葉から甘~い匂いが漂うのです。相当強い匂いです。なので木が近くにあるとすぐに分かりますし、似た形の葉を持つ木とも区別することができます。綿菓子のような香りですが、調べてみると成分的にカラメルの匂いそのもののようですね。

 

筑波大学のカツラが、学生さんたちのリラックスのために植えられていたら素敵な話だなと思いますが、どうなんでしょうね。たまたまでしょうか?

 

2024年6月26日水曜日

ルリヒラタムシ

 名前の通り平たい甲虫です。有名な虫ですが、結構珍しく出会うと嬉しくなります。

 

良く撮れたと自画自賛したい写真

このように金属光沢を持っていて大変綺麗で、大きさも2センチを越えてきて結構なものがあります。

 


この角度からだと分かりやすいかな。平べったさが良く分かると思います。

 

この平たい体は枯れ木などの樹皮の下に潜りやすくするためのようです。なぜ潜るかというと、隠れるためだけではなくて他の昆虫を探して捕食するためです。こうみえて、肉食性です。

 

この個体も、カミキリムシの幼虫を探していて見つけました。この個体もまたこの木でよい思いをしたに違いありません。

 


ルリヒラタムシとは色が異なる種がいて、こちらはベニヒラタムシといいます。この種はルリヒラタムシよりも小型で、見る機会もより多いです。やはり大変扁平な姿をしています。

2024年5月30日木曜日

ヤマシャクヤクとフタスジカタビロハナカミキリ

今回はこの時期ならではの清涼感のある話題を。 

 関東付近だと5月頃に、ヤマシャクヤクという可憐な花が咲きます。名前の通りシャクヤクの一種で、自然に生える原種のひとつです。シャクヤクといえば綺麗なものの代表格で広くご存じの方も多いでしょう。結構大型で目立つ、人気も高い花です。
このヤマシャクヤクですが、綺麗な花びらが汚くなっていることがあります。
このようにかじられた痕がついていたりします。このようになっていると、フタスジカタビロハナカミキリがいることがあります。
このようにそっと花を覗き込むと、ひっそりとこの美しいカミキリが中に潜んでいたりします。1センチを超える、と書くとあまり大きくないように聞こえますが、カミキリムシにしては大型の方です。天気の良い日には、ぶんぶんと飛び回って花に飛びついたり、盛んに後食している姿を見ることができます。
このカミキリはヤマシャクヤクに強く依存し、成虫もその花を食べますし、幼虫もこの植物の根を食べるとされています。そのためか、非常に緻密な色彩をしています。体を覆う翅はクリーム色なのですが、頭部や前胸、触角や脚の先端は黒く、これはヤマシャクヤクのおしべの色に合わせたものだと考えられます。

脚はまるで靴下を履いているようです。単品でみれば白と黒のコントラストがはっきりして非常に美しく、目立つように思える体色ですが、ヤマシャクヤクの花の中だと意外に目立ちません。
このカミキリムシは、当然ながらヤマシャクヤクがないといないので、この植物があることが前提条件となっています。ヤマシャクヤク自体が珍しいものなのでおいそれとみつけることができないのですが、分布しているところでの個体数はそこまで少ないものではありません。

 問題は出現時期で、ヤマシャクヤクが咲いていることが虫を見つける前提となるのですが、ヤマシャクヤクの開花期間自体が大変短いので、きっちりと時期を合わせることが大切になっています。最近は温暖化の影響かはわかりませんが、開花と出現時期が早くなる傾向があるので、行ったら既に花もカミキリも終わっていた、なんてこともよくあります。

 自然が好きな方はきっと気に入る虫なので、ぜひともこのフォトジェニックな虫を探してみてはいかがでしょうか。