2024年12月31日火曜日

ウバタマムシ

 タマムシは、数ある昆虫のなかでも名前を聞いたことがある方が多い虫でしょう。その代表であるヤマトタマムシ、もしくは単にタマムシとよばれている種は大きさもかなりのもので、綺麗な虫の代表のように扱われています。実際に大変綺麗な虫です。

 

余り良い写真がありませんでした

このタマムシはサクラなどの各種広葉樹を幼虫が食べ、また成虫はエノキなどを食する習性があります。この習性を知っておくと、成虫の季節にこのタマムシを比較的簡単に見つけることができます。センターの中には一本の巨大なエノキが生えていて、目立つ位置にあるのでこのタマムシを引きつけるご神木になっています。真夏にこの木を眺めていると、タマムシがぶんぶんと飛ぶ様子が観察できます。

 

このタマムシと比類するほど大型のタマムシが日本にはもう1種類いて、それが今回の主題であるウバタマムシです。大きさは似たようなものですが、なぜかあまり話題になりません。というのも、この種はそれほど綺麗ではないからです。少なくともキンキラキンに輝いたりはしません。よく見るとなかなか綺麗なのですが。

 

これがウバタマムシです

ウバタマムシはタマムシと異なり、マツなどの針葉樹を幼虫も成虫も食します。また成虫で越冬するので、春の比較的早い時期から出現しています。日当たりのよいところに生えている背の低いマツがあったら、ウバタマムシが葉を食べに集まっているのを見ることがあります。秘密ですが、センターの近くにウバタマムシがたくさん集まる鉄板の場所があります。

 

さて、このように本州のウバタマムシはそれほど綺麗ではないのですが、この種が琉球列島では、なんと次のような色へと変化します。

 

これが沖縄のウバタマムシ、です(写真を入れ替えました)


一応本州と同じウバタマムシとされていますが、全く別の種のように色が変わり、タマムシの名に恥じないぐらい、派手な金緑色を示します。写真では表現しにくいですが、生きているときは、本家タマムシを上回るぐらいの美しさです。正直、日本産の虫のなかでもっとも好きかもしれません。

 

さすが沖縄、亜熱帯なだけはあって、虫も派手になりますね。

 


2024年11月22日金曜日

シナノエゾハイイロハナカミキリ

 前回のブログで紹介したハイイロハナカミキリの仲間は日本には3種類もしくは4種いることになっています。そのうち本州にいるのは:

 

ハイイロハナカミキリ

ニセハイイロハナカミキリ

エゾハイイロハナカミキリ

 

です。どれもこれも非常に似ていて、図鑑をにらめっこしても区別はそんなに簡単ではありません。なお上に書いた和名は少々分かりやすくしています。

 

このうちニセハイイロハナカミキリが本州では最も容易に出会うことが出来るでしょう。分布も広いし、標高も低いところから高いところまでいます。前回の写真もこの種です。

 

前回も使った写真です

ハイイロハナカミキリはやや局所的で、標高の高いところで見かけることがあります。ニセハイイロハナカミキリに似ていますが黒が目立ち、白い部分もクリーム色、という感じです。

 

これがハイイロハナカミキリ。黒っぽいです

エゾハイイロハナカミキリは名前の通り北海道を中心に分布する種ですが、本州でも長野県辺りのごく一部でのみ分布していて、北海道の一群とは別の亜種とされています。亜種名からシナノエゾハイイロハナカミキリ、ともよばれています。これは、日本が寒かったときに分布を広げた虫が中部山岳地帯に取り残されたのだとも考えられています。すごいですね。

 

これがシナノエゾハイイロハナカミキリ、大型のメスです

このシナノエゾハイイロハナカミキリは他の2種と対照的に大変珍しい種で、一部にしか分布しないことも理由の一つですが、依存する木が決まっていて、「トウヒ」という聞き慣れない木の枯れ木を主に幼虫が食べますので、この木に成虫も集まります。ニセハイイロハナカミキリなんかは、低地ではアカマツ、高地ではシラビソなどモミの仲間など、針葉樹であれば幅広く食すのと対照的です。

 

トウヒはエゾマツの変種らしくて、こちらも日本が寒かったときの名残だと言われています。そう考えるとシナノエゾハイイロハナカミキリがトウヒに依存するのも分かるような気がします。氷河期以降ず~っと、そのような関係性を保って本州のほんの一部で生き残ってきたのです。すごいですね。

 

トウヒの巨木。鱗状の樹皮が一応特徴です

このような習性からこのカミキリムシに出会うには、産地に赴いて、トウヒのちょうど良い具合の枯れ木を歩いて行ける範囲に見つけるという剛運が必要になります。トウヒはそんなに多い木ではなく、そのちょうど良い枯れ木を見つけるのは簡単ではありません。針葉樹は似たような樹皮を持った木が多くて区別が難しいのに、枯れ木となると葉も余り付いていないので木の同定すら大変です。枯れ木があっても、古かったりすると全然だめです。

 

私も長年の宿題になっていましたが、今年、ようやく出会うことができました。そのときの様子がこちらですが、ハイイロハナカミキリの仲間は羽化した後、成虫で越冬します。ですので冬でも成虫に会える楽しみがあります。

 

トウヒの枯れ木の樹皮下で越冬しています

他の種とどこが違うのか?と問われれば大変悩むぐらい似ていますが、

 

赤で囲った部分です

分かりやすいのは、この部分の中央の筋が3種のなかで一番太くてはっきりしているのが特徴です!うーん、分かりやすいのはそれだけですね。あとは平均的に大型で、白っぽさが目立つところでしょうか。まあ、そのような微妙な違いに気付くのが面白いのです。

 

 

2024年10月28日月曜日

ハイイロハナカミキリの仲間

 おおよそカミキリムシに見えない独特の形態を持っているハナカミキリの一群です。属名Rhagiumから、「ラギウム」とよばれています。

 

ハイイロハナカミキリの1種です



このように、触角が短くてずんぐりとしていて、いかにも原始的、といった雰囲気を纏っています。なお、本当に原始的かどうかは分かりませんが。

 

ネットに入ってきた個体


ハナカミキリという名にも関わらず一般的には花にはあまり集まりません。マツの仲間の花があれば来ることがあります。

 

なじみのない方が見たら、カミキリムシとは思えないのではないでしょうか。そのような独特の形態から、カミキリムシの収集を始めた際には欲しくて欲しくてたまらなくなったのはよい思い出です。

 

実はこのグループは採集に慣れてくると、天気の良い日に針葉樹の新鮮な倒木や伐採木にわんさかと集まってくることがあり、出会うのはそれほど難しくはなくなります。


今年も初夏の1ヶ月ほどの間、他のカミキリがほとんどいないなか、この仲間だけがたくさん見かけられました。

 

2024年9月27日金曜日

科博の昆虫展に行ってきた件

 なんか、youtube動画のようなタイトルになってしまいました。

 

現在、国立科学博物館では「昆虫マニアック」という、科博や関連のコレクションをこれでもか、と使った壮大な展示が開催されています。正直、お勧めです。

 

私は2回も行ってきましたが、一通り見終わる頃には疲れ果ててしまうぐらいの展示量で、質も素晴らしいものでした

 

一部を紹介しましょう

 


これがポスター。周知にも使われています。

 


展示はテーマ毎にいくつかのコーナーに分かれています

 



トンボがいるコーナー。トンボは標本を作るのが大変難しいですが、さすがに綺麗です。



世界最大のトンボ、テイオウムカシヤンマがいます。日本の最大種のオニヤンマ(下)より巨大ですが、オニヤンマも負けていません。

 


もちろんゴキブリの展示もあります。こいつは下田にもいますね。

 


セミも多種類が展示されていました。世界最大のセミ、テイオウゼミかな(テイオウとかコウテイとか、大きなものには似た傾向の修飾が付きますね)

 


今年大発生した、アメリカの素数ゼミ。たくさんいました

 


バッタやカマキリの展示。それにしてもすごい形です。展足もばっちりです

 


日本のオオスズメバチが世界最大のスズメバチなのは有名な話です。世界にはもっと巨大なハチもいます。

 


某漫画で有名になった?パラポネラ。刺されるとすさまじく痛いらしいです。針がすごく目立っています。ちなみに、アリは飛ばないハチです。

 


展示室には、ところどころこのようなオブジェが立っています。これは寄生蜂ですね

 


ガとチョウのコーナー。これらはアゲハチョウの仲間ですが、派手ですね。3匹はいわゆるトリバネアゲハの仲間で、右下はカラスアゲハに近い種かな。

 


世界を代表する美しいチョウ、左上がアグリアス(ミイロタテハ)、下がモルフォ。両方ともアマゾンにいます。

 


派手さならばガも負けていません。ちなみにチョウは、ガのなかの一グループに過ぎません。

 


某映画で有名になった(クロ)メンガタスズメ。日本にもいます

 


こんな小さなガも展翅がばっちりです。毛で翅を押さえたりします

 


難易度が高い、幼虫の乾燥標本もありました。ちょっと苦手です

 


昆虫だけでなくて、クモや多足類のコーナーもあります

 


最近沖縄から記載されたばかりのリュウジンオオムカデ。水中に潜って餌を探します。大きいとは聞いていましたが、すさまじい巨大さです

 


さてさてようやく甲虫のコーナーです。じっくり見ていきます

 


人気のあるカブトムシやクワガタムシには、このような遊び心のある展示があります


 

ウェストウッディオオシカクワガタかな。かっこよいですが、値段はかわいくありません。

 


南アフリカの異形クワガタ、コロフォンとよばれています。どれも珍品だそうです

 


軍神マルスから名前をとった、マルスゾウカブト。巨大で大変かっこよいカブトムシです。

 


有名になったプラチナコガネ。ちなみに標本のお値段もプラチナ級

 


日本のヒゲコガネもいました

 


世界最大のカミキリムシのひとつ、タイタンオオウスバカミキリ。学名がTitanus giganteusで、簡単に言えば、でかい・でかい、という意味になります。

 


これまた有名なテナガカミキリ。現地ではそんなに珍しくないようです。

 


オスの前脚が長いことで有名なテナガコガネ。日本にも1種います。

 


ホウセキゾウムシ。名前に納得する美しさです。

 


固くて有名なカタゾウムシ。派手ですが、、、

 


日本にいるカタゾウムシは真っ黒です。日本らしい、、、かな

 


研究者から寄贈された標本もあります。これはアリヅカムシ。。。本体は見えないくらい小さいです。良く集めたものです

 

とまあ、こんな感じで量・質共に素晴らしい昆虫がこれでもか、と紹介されています。標本だけでなくて生態とかも解説されているので大変勉強になります。こんな質の高い展示が近くで開催されるとは、東京は首都だけあって良いところだと思います。興味がある方は是非とも足をお運びください。

 

(この展示の影響か、同じく東京で開催された今年の標本即売会は例年にない大盛況だったそうです)

 

2024年8月27日火曜日

カラフトホソコバネカミキリ2024 ~リベンジ編~

 

去年、せっかく交尾中の個体を複数見つけたのに、カメラの不調でよい写真が撮れなかったカラフトホソコバネカミキリ。今年はサンプルが必要になったこともあり、交尾中の良い写真を求めて再チャレンジすることにしました。

 

(去年の記事はこちら

 

このカミキリは木からメスが出てすぐに交尾を済ませ、その後、メスは産卵に木を訪れますがオスは寄り付かなくなります。なのでオスは大変採りづらく、発生初期に行くことが交尾中の写真を狙うためには必要です。確実に雌雄の写真をものにするために、去年と同じ時期、数日早くにポイントに行く計画を立てました。

 

「去年は異常に暑い年だったから早く出て交尾を済ませてしまっていたけど、今年はさすがにそこまでではないだろうから、ちょうどオスもメスも羽化脱出してくる頃になるだろう」

 

と準備万端だと思っていましたが・・・・・

 

なにこの暑さ!6月も暑かったですが7月に入って急激に暑さが過激になり、虫の発生時期が異様に早くなってしまいました。早く出現して、さっさといなくなります。去年より暑くなるとは、まったく想定外でした。

 

ということで、結局出遅れ感が満載の状態で行くことになりました。季節の進行ばかりはどうしようもありません。それにしても異常だった去年を上回る暑さになるとは、驚くばかりです。

 

ついでに予定日の数日前に、知人から「今年は非常に数が少ないようでぜんぜんだめだった・・・」というありがたいご連絡。絶望感あふれる片道300km越えの採集旅行となりました。

 

といっても山は楽しくよいことばかり期待されるので、現地には6時には到着してしまいました。当日、天気予報では曇~雨でしたが結構晴れており、悪い天気予報もあって登山客などもほとんどいなくて静かでした。

まあまあ良い天気

 

早速夜露に濡れた森に入ります。まあそんなに早く入らなくてもいいのですが、待っていても仕方がないので歩き始めます。足下をずぶ濡れにしながらよい状態の木を探しますが、去年よりも虫が見つかりません。数が少ないのはその通りのようです。

 

こんなところにいるはずですが。。。

10時近くになって、ようやくメスが見つかりました。産卵中で、既に交尾は済ませているようです。その後もちらほらメスは見つかりますが、オスは一向に姿を現しません。

 

産卵中のカラフトホソコバネ、メスです

午後になりもうあきらめモードになった13時ごろでしたが、まったく期待していなかった木を覗き込んだ時、ようやく交尾中のペアが見つかりました。あきらめなくてよかったです!やはり虫捕りは忍耐との勝負です。今回はカメラも無事で、おそらくこれが今日見つかる唯一のペアでしょうから、夢中でシャッターを切りました。

 

みつけました!

アップの写真も撮りました

と、異常気象に振り回されつつもなんとか任務を達成し、ほっとして長~い距離を運転して帰りました。

 

振り返ってみると、このときは真夏のシーズン開幕を楽しめたのですが、まさかこの酷暑がず~っと続くとは、思ってもみませんでした。

 

2024年7月29日月曜日

チャイロヒメコブハナカミキリ

 地味~なカミキリムシで、茶色なので茶色の木の幹にいると写真撮影が難しいです(写真のクオリティが悪い言い訳)。久しぶりに出会いました。なかなか珍しいとはいえ、極珍品というほどではないのですが、なんと10年ぐらいぶりでした。

 

これはメスです

漢字で書くと「茶色姫瘤花天牛」です。茶色くて、やや小さくて、瘤があるハナカミキリです。花には頻繁には来ませんが、たまに訪れます。

このカミキリはカツラという木の大木、その根を幼虫が食べるといわれています。ですので成虫もカツラの大木に集まります。

 

上の個体がいたカツラの大木。直径1mは越えていたかも

そのためこのカミキリに出会うには、まず「カツラ」という木を見つける必要があります。変わった名前ですが、そんな木があることすら知らない方も多いのではないでしょうか。

 

カツラの葉はハート型です

実はカツラの木は筑波大学のキャンパスにはたくさん生えています。植栽かな?分かりませんがあちこちにあります。でも大学では標高が低すぎてチャイロヒメコブハナカミキリはいません。もう少し高標高のところに行く必要があります。写真撮影した個体も1500mぐらいのところで見つけました。

 

カツラの木には面白い特徴があります。落ち葉から甘~い匂いが漂うのです。相当強い匂いです。なので木が近くにあるとすぐに分かりますし、似た形の葉を持つ木とも区別することができます。綿菓子のような香りですが、調べてみると成分的にカラメルの匂いそのもののようですね。

 

筑波大学のカツラが、学生さんたちのリラックスのために植えられていたら素敵な話だなと思いますが、どうなんでしょうね。たまたまでしょうか?