2022年12月30日金曜日

分子生物学会

 早いもので、2022年も終わりを告げようとしています。12月の記事はこれにしようと早々に決めていたのですが、なかなか書くことができませんでした。

 


12月の最初の週に、分子生物学会に参加してきました。もちろん真面目な要件で、研究の進捗などを発表したり、共同研究者と打ち合わせをしたり、知人に会ってざっくばらんな話をしたりして、有意義な学会でした。コロナの問題があって2年ぶりでしたが、楽しかったですね。

 

今回の学会では特に色々な方にお会いしました。始めてお会いする方も数多かったのですが、以下のように久しぶりにお会いする方や共通の知人がいる方も多く、話が弾みました。

 

・うちの研究室で研究員をされていて、今は大学で教員になられた方 2名

・学生時代にうちの研究室に実験をしに来られた方 1名

・大学時代の同期 2名

・私の出身研究室の大先輩 2名

・私の臨海実習を受講してくれた大学の卒業生 1名

・私がカミキリムシで結構お世話になっている方の研究室の卒業生 1名

 

などなどでした。

 

そのなかでも強烈だったのが、、、、

 

今年の6月某日、私はN県でとあるカミキリムシを狙っていました。結果はさんざんだったのですが、そのときに立ち寄った林で、一人の虫屋さんに出会ったのでした。私はその方とは初対面だったのですが、共通の知人がいたのでお名前は聞いていました。向こうも私のことは分かったようで、しばし歓談をしたのでした。

 

分子生物学会で、なんとその方にお会いしたのです。いやー、虫を採集しているときにお会いした方と、研究の場でお会いするのはほとんど経験がないので、さすがに驚きました。お聞きしたところ、私が参画しているとある事業に、本年度から加わったとのことでした。世の中狭いものです!

 

それでは皆さん、良いお年をお過ごしください。

2022年11月25日金曜日

オオ○○(閲覧注意!)

虫好きだからといって、どんな虫でも好きなわけではありません。 

 よくあるのが、、、、

 「先生、ゴキブリが出ました。取ってください(虫好きでしょ!)」

 いやいや、始末はしますけど、ゴキブリは大嫌いです。 

 さて、ゴキブリといえばたいてい皆さんが想像するのが楕円形のフォルムを持った「クロゴキブリ」を想像されると思います。しかし実際は、様々な種がいます。

前にはサツマゴキブリを紹介したりしました。この記事ですね。

 さて先日、通勤途中に落ちていたこれ、、、(少しだけ配慮したスペース付き)














大迫力です!


その名も オオゴキブリ といいます。その名の通り巨大なゴキブリで黒光りしています。

 実はオオゴキブリは、朽ち木を食べて育ちます。クワガタムシなんかと同じですね。ですのでクロゴキブリと比べると衛生的には問題がないはずなのですが、「かっこよいよね」と手が出たりはしないのです。

やはり姿形がゴキブリなのですよ。触るのは躊躇してしまいます。写真だけに留めておきましょう。この記事用に写真を加工しているとき、拡大された写真におもわず背筋がぞわっとしました。

 夏の低地でカミキリを採っていると、たまにこのゴキブリが飛んできて目の前に止まったりします。紛らわしいことこの上ありません。

2022年10月28日金曜日

コメツキムシ

おそらく非常に有名な虫で、見たことがある方も多いでしょう。細長い体で、花や樹液に集まる習性、捕まえても噛んだり変な汁を出すこともあまりなく(出す種もあります)、短い脚でよちよちと歩き、ひっくり返ると「ぺちぺち」と頭部(本当は頭部+前胸です)を打ち付けて飛び上がろうとするなど、いかにも平和な虫といった感じで、争い事なんかは全く起こさないような印象があります。ちなみに英語ではClick Beetle (クリックビートル)です。

 

こんなやつです

コメツキムシの多くは焦げ茶色など地味な色合いをもっていて、種を区別するのもなかなか難しいですが、たまには派手なやつもいます。

 

例えばヒゲコメツキ。大きな体と、綺麗な体色、オスは立派な触角を持っています。ちなみによく見かける種ではありますが、出会うと嬉しくなります。

立派な触角を持ったオスです
 

オオツヤハダコメツキ。こちらも大きく、艶があって目立つ種です。

 

オオツヤハダコメツキです(間違っていたら済みません)

とまあ、このような「私はまったく害も力も無いものでございます」と言っているかのような虫なのですが、実は、この平和な姿は仮そめのものなのです。この嘘つきやろう、と私なんかは言ってしまいたくなります。


 

といいますのも、コメツキムシの幼虫は肉食性で見た目から既に凶暴そうです。そして実際に凶暴で、朽ち木などに入り込んでは他の虫の幼虫などを捕食しているのです。




↓覚悟してみてください↓




凶悪な姿をお楽しみください

これですよ、これ。いかにも恐ろしい姿をしているでしょう。体も大変固く、カミキリやクワガタのぶよぶよな幼虫とは全く印象が異なります。部屋にこんなのがぺたっとくっついていたら、絶叫すること間違い無しです。


珍品のカミキリムシの幼虫や蛹を採集していると、代わりにコメツキムシの幼虫が出てくることがあって、悔しい思いをさせられたこともしばしばあります。特にお食事中のものに出くわすと、いつも背筋が凍るような、そんな感覚を覚えます。

2022年9月27日火曜日

12年に一度のオオトラカミキリ採集

 通勤途中でこんな物を拾いました。もう季節はすっかりと秋ですね。

 


さて、今年は12年に1回の寅年なので、日本で最大のトラ、オオトラカミキリとどうしても野外で出会わなくてはなりませんでした。

 

ということで気合いを入れて、8月中旬からじ~っと天気図を確認したり、とある方にお願いして秘密の地図を入手したりして万全の体制を整えたつもりでした。

 

しかしながら蓋をあけてみると、週末近くになると雨、台風、というような予報が続いて、極めて難しい状況が続いたのです。

 

オオトラカミキリとの遭遇確率を増やすには、晴れた天気が続いて森が乾燥気味になって、しかも高温になることが望ましいのです。

 

「もしかしたら」と、無理して2回ほど出撃しましたが、そのようなときは例に漏れず、全く遭遇できませんでした。2回目なんかは、「ポイント近くはたしかに雨だが局地的で、行ったらピンポイントで晴れているかも」とか都合のいいように解釈して車を走らせましたが、山道を登っていくとずぶ濡れで、そのまますごすごと退散したのでした。

 

という成果の上がらない日々が続きましたが、これを逃したら今年はだめだと思うぐらいの好条件がようやくやってきたのでした。

 

気合いを入れて朝早くから現地に向かいました。というのは嘘です。オオトラカミキリはそんなに朝早くからは活動しないことが多いので、ちょっとお寝坊しても問題ありません。朝早くには朝早くの採集方法がないわけでもないのですが、、、今回は体力温存のためにゆっくりと出発しました。

 

森に入ると、「今日は確実に出会えるぞ」と思える絶好の天気。ゆっくりとモミの木を1本1本見ていきます。

 

数年前にオオトラが脱出したモミの木

ところが1時間、2時間と経過しますが全くいません!暑い中斜面を這いずり回り、じりじりと体力が消耗していきます。

 

少々焦りが出てきた頃、ようやく1本の木に違和感を覚えました。近づくと、スズメバチに擬態したオオトラカミキリでした。

 

逃げるので撮影するのに必死です

本日出会えなかったら絶望的だというぐらいの絶好の条件でしたから、嬉しいというよりもホッとしたのが正直な感想です。

 

写真を撮ろうとしたら素早く歩き出したので、焦りながら何とかカメラに収めました。時間は午後二時半、森に入って4時間は経過した頃でした。


この日は、30分ほど後にもう1匹に出会うことができ、幸せな気持ちでポイントを後にしました。ちなみに次の日は筋肉痛で大変でした。

これは上と同じ個体です


2022年8月24日水曜日

特別天然記念物

 

ハードな採集を終えて自動車で山道を下っていたときのことでした。

 

黒っぽいものがいきなり崖から降りてきて、車に接触しそうになりました。危ないところでしたが、何とか轢かずに済みました。

 

野犬かな、怖いな~と思いながら外を見るとそこに居たのは・・・・

 

カモシカでした。国の特別天然記念物です。

 


車を停めて、逃げる前に何とか写真を撮ることができました。距離があったのでぼんやりした写真になりましたが。。。

 

ちなみにこの日は、とあるカミキリムシに会いに片道4時間かけて出撃したものの、目的のものは陰も形もありませんでした。が、カモシカだけでなくシマウマにも遭うことができたよい一日でした。

 




キジマトラカミキリ、学名がXylotrechus zebratusといって、縞模様からゼブラと言われています。ずいぶん前に採集したきり縁のない虫でしたので、数年前から久しぶりに出会いたいとずっと思っていました。今年はなぜか縁があって、3カ所でお会いすることができました。

 

この日はゼブラが集まるご神木を発見し、こんなシーンも撮影するなどの幸運に恵まれました。

 


この木はコメツガという樹種ですが、ご神木は立派な大木の横に生えている、ひょろひょろとした木でした。数年もしたら枯れてしまうように思います。枯れるとご神木は力を失い、ゼブラは採れなくなります。

2022年7月26日火曜日

このところ多忙でした

6月途中から7月中旬に掛けては様々なイベントやら何やらで大変多忙な時期でした。今年は国際ホヤ学会が日本で開催され、それに1週間ほど参加したり、その次の週には臨海実習と慌ただしい日々でした。ようやく、一息つくことができました。

 

久しぶりに山に行ったのですが、途中で雨に降られ、目的の虫のひとつが採れずとほとんど登山したようなものでした。


この綺麗なカメムシは多かったです。私の手や網にも次々に飛び込んできました(迷惑)

 

奇妙なものも見つけました。。。

 


寄生蜂が何匹も枯れ木にたかっているのです。この写真だけでも6匹映っていますが、写真に入りきらない場所にもおびただしい数が止まっていました。さすがに、ちょっと気持ち悪かったです。

 

こんなセミもいました。


コエゾゼミかな。関東付近では平地にはいないセミで、高いところに止まっていることが多いので、鳴き声は良く聞くのですが姿を見ることはあまりありません。黄色の模様が綺麗です。


もう虫採りのシーズンも終盤。次はいいものに出会いたいと切に願います。

2022年6月3日金曜日

ゆるキャン△

 ついに、この話題を出す時が来たようですね。

 

少し前に、私にとって画期的なアニメの放送がありました。それが「ゆるキャン」です。

 

内容としては、高校生グループがキャンプを楽しむ、というものなのですが、、、、重要な点は、「この主人公達が山梨県の身延町」に住んでいることなのです。

 

そう、分かる人には分かることですが、身延町は虫屋、特にカミキリムシをやっている方々には聖地とも言える場所で、様々な珍品カミキリムシが採集される絶好の採集地なのです。正直にいうと、行っても特に荘厳な感じがあるわけでもなく、幽玄な深山でもなく、この辺ともそんなに変わらないところなのですが、とにかく色々採れるんです。

 

このブログでも紹介してきた

オオトラカミキリ

 オオシロカミキリ

 

オオアオカミキリ

 

これらは全て身延で採ったものなんですよ。私はこれらを「身延の大三元」と呼んでいます。

 

ということでさんざん訪れた土地なので、

 

「ああー分かる分かる、この交差点、良く信号に引っかかった」

「ここで描かれているコンビニエンスストア、寄ったことある」

「このトンネル知っている。中ノ倉トンネルや。良く通った(第1回放送で出てくる本栖湖の近く)」

「駅名分かるよ!この駅、無人駅なんだよね」

 

とか、一人で興奮していました。テレビで知っているところが映るとなんで嬉しくなるのでしょうね。

 

さて、この前の放送ではこの方々がなんと伊豆を訪問するという、さらに嬉しい事態になりました。

「なるほど、このルートで来るんだ」

「細野高原や、よく行ったな~(虫採りに)」

「この交差点、あれや、西伊豆に行くときに通るやつや」

「あの山、城山っていうんだ。ジオスポットなの知らなかった」

 

とか、伊豆についてもよく勉強になりました。

 

さてこの間、ついにこの主人公達が通う高校のモデルを発見したんですよ。それがこちらです。

 


うん、ほぼ同じです。気になる方はアニメで確認してみてください。漫画もあります。


ちなみにこの校舎は正確には中学校で、しかも今は廃校になっているそうです。

2022年4月25日月曜日

カラスザンショウとハチミツ

カラスザンショウ、どこにでも生えている印象のある木ですが、果たしてどのぐらいの方がこれを認識しているでしょうか。私も、虫をやる前は名前ぐらいしか知りませんでした。

名前はカラス+サンショウで、サンショウの仲間ですが食用にならない、ぐらいの意味でしょうか。サンショウよりはかなり大きな木で、同じくトゲがあります。

 

虫を知っている方にはきわめて重要な木で、例えば蝶では多くのアゲハチョウの仲間が食べるので、この木を知っていると飼育がとても楽になります。カミキリムシでもこの木を食べるものが複数あります。私も今は冬に葉をつけてなくても、枯れ木でもだいたい分かります。

 

カラスザンショウの葉はこんな感じです

この木は真夏に花を咲かせますが、この花の集虫力は半端ない威力があります。花の咲いている木の下に立っているとぶんぶんとハチが飛ぶ羽音が聞こえてくることもあるぐらい、人気のある木なのです。さぞかし美味しいのでしょうか。花は地味ですが。。。

 

花です。カミキリも蝶もやってきます

カラスザンショウの花で採集したオオアオカミキリです。大変綺麗です

さて、最近こんなものが売られていることを知りました。

 


カラスザンショウの蜂蜜です。

 

食べてみると、うーん「カラスザンショウ!」ってわかるはずはないのですが、確かに独特の風味など花の匂いを連想させるものがあって、それっぽいかも、、、しれません。もちろんハチミツですから、おいしいですよ。

 

〇〇〇の花の蜂蜜、というのは色々と売られていますが、どのように花を限定しているのかは気になります。花の咲く季節を狙って採取しているのでしょうか。花毎に確かに味が違って面白いので、試してみるといいと思います。トチノキのハチミツは結構お勧めです。

2022年3月29日火曜日

D-セリンに関する論文がでました

 長かった冬もようやく明けてきて、春が到来しました。この週末ぐらいでぐっと季節が進んだようで、各種の花が咲き誇っています。

 


一方でこの季節は別れの季節でもあり、様々な方々がセンターから旅立っていきました。新しいところでも活躍をしてもらいたいと思います。

 

少し前のことになりますが、大きめの論文が出たのでプレスリリースをしました。ホヤにおけるD-セリンという物質の機能を明らかにした、というものです。詳細は以下のリンクにある記事をご覧ください。

 

https://www.tsukuba.ac.jp/journal/biology-environment/20220312040000.html

 

簡単に紹介すると、生物の体を形作るタンパク質はアミノ酸が集まったものです。アミノ酸にはグリシンを除いて、L体とD体という、同じアミノ酸にも関わらず互いに鏡像の関係にあるフォームがあります。例えばグルタミン酸というアミノ酸にも、L-グルタミン酸とD-グルタミン酸があるのです。

 

生物の体はなぜか、ほとんどL-アミノ酸ばかりで作られています。どうしてかは分かっていません。しかしながら、D-アミノ酸がわずかですが存在していて、重要な機能を持つことが分かってきています。その一つがD-セリンです。このアミノ酸は我々の脳内の情報伝達に使われているほか、皮膚においても機能していることが示されてきています。

 

最近の私たちの研究から、ホヤもD-セリンを持っていることが分かりました。詳細に調べたところ、ホヤのD-セリンは皮膚において働いていて、特にホヤが大人になる変態に必要であることが分かったのです。この一連の研究を纏めましたので、興味のある方は読んでいただくと嬉しいです。論文は以下にあります。

 

https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abn3264?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%20%200pubmed

2022年2月21日月曜日

2022年は寅年です ~トラの名前~

 今年の干支、トラカミキリの話の続きを書きましょう。

 

トラカミキリの仲間には、よく考えたら変わった名前を持つものがあります。

 

まずは人名シリーズ・・・それぞれ、

 

ヨコヤマトラカミキリ

 

ハセガワトラカミキリ

マツシタトラカミキリ

 

ニイジマトラカミキリ

 

です。本州で見ることができるこれら4種には、このように人の名前が付けられています。確か、昆虫の分類に貢献した横山、長谷川、松下、新島の各研究者にちなんで名づけられたのだったかな。

 

このなかでは、ヨコヤマとハセガワがかなりの珍品です。ハセガワは特に、野外で成虫を見る機会はなかなか無い種です。このあたりでは、富士山周辺にいます。長谷川さんが採れちゃった!とか、横山さんが採れた~むふふ、とか言っています。

 

次、これ、何の変哲も無いトラカミキリに見えますが、名前、分かりますか?


なんと、「トウキョウトラカミキリ」です。昔は東京にたくさんいたのでしょうか。現在ではこちらもかなり珍しい種で、見つけると嬉しくなります。「人」の字をイメージさせる模様を持っています。

 

さて、次はこの3つです。

 


これはキイロトラカミキリです。まあ分かるかな。

 


これがシロトラカミキリ。えっ?確かに白い部分もあるけど。。。。

 


そしてこれが・・・・

 



クロトラカミキリ

 

はあっ?どこがやねん!

 

 

ちなみにキイロとシロは優占種といってもいいかな、というぐらい多い種ですが、クロトラカミキリはかな~り珍しいです。数年前に学生さんに、「カミキリが居たので写真に撮りました!」と言ってみせてもらったらクロトラカミキリだったことがあって、「それでその虫はどこにあるんだい」と聞いたら、「いや、採ってませんけど」と言われてしまいました。

 

さて、クロトラカミキリにはそっくりさんがいます。ほぼ同じ条件で撮影したものですが、、、、


 

左がクロトラなのですが、右はエグリトラカミキリといって、別種です。エグリさんはクロと異なり、トラカミキリを代表する勢いの優占種です。下田にもいます。でも、最近見る機会が減っている気もします。

 

次のそっくりペアはこれらです。

 


左が「スギノアカネトラ」、右が「トガリバアカネトラ」です。両方とも、複雑な模様をしていてかなり綺麗です。似ていますが、習性やレア度はかなり異なります。トガリバアカネトラは普通にいる種で、幼虫は広葉樹の枯れ木を食べます。スギノアカネトラは名前の通りスギの、しかも生木を食べます。害虫とされていますが数はかなり少ないようで、採集するのは簡単ではありません。センターにたまに飛来すると嬉しくなります。

 

両者は本当に似ているので、カミキリを集めている人でも、自信満々に「スギノアカネトラです!」といってトガリバアカネトラを示したり、逆のことをよくしているのをみかけます。

 

最後のペアはこれです。

 


左が「シロオビトラ」、右が「シラケトラ」です。名前まで似ています。これらは両方とも広葉樹の枯れ木に集まるなど、習性もそれなりに似ているかな。よーく見てください。シロオビトラのほうが頭部(ではなくて本当は前胸ですが)が丸くて太いです。また全体的に光沢がありません。シックでかっこよいと覚えるとよいです。

この2つは本当に似ているのですが、珍品度が大きく違っています。シラケトラは下田にもいて「ふ~ん、シラケか・・・」というぐらいのものですが、シロオビトラはなかなか見られない種です。私も出会えたのはわずか数回です。そのためカミキリを集めている人が「シロオビトラを採りました!やったね」といってシラケトラの写真を出しているのをよく見ます。「そ、それは違うんや」と、なんか申し訳ないような気になってしまいます。ネットでシロオビトラで検索しても、名前に騙されてはいけません。




2022年1月14日金曜日

2022年は寅年です

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。遅れましたが、新年の挨拶です。

 

今年は12年に一度の寅年です。私にとっても特別な年です。さて、はい、トラといえば、ほとんどの方が思い浮かべる生き物がいますね。そう、トラカミキリです(えっ?)。私もトラカミキリをデザインした年賀状をいただきました。

 

このHPでは、何度かトラカミキリの仲間を紹介してきました。しかしながら改めて思い返してみると、トラカミキリの(日本での)基準とも言える種を紹介してなかったと思います。では、それを紹介しましょう。

 


トラフカミキリです。この仲間が「トラ」と名付けられた元となるようなカミキリムシです。2センチぐらいあって、トラカミキリの中ではかなりの大型種です。スズメバチぐらいの大きさがあります。生きている時は、本当にスズメバチと見間違えそうになります。

 

上の個体は、伊豆半島で得たものです。とある方から「xxx (秘密の地名)に行ったところ、トラフカミキリがたくさん付いている木を見つけちゃいました。ぐふふふ」と自慢教えてもらって、見に行ったときに撮影したものです。

 

トラフカミキリは、北海道から沖縄まで広く分布していて、生きたクワの仲間を食べます。クワはカイコの餌として重要で、各地で栽培されていました。が、養蚕の衰退と共にクワは減ってしまい、トラフカミキリも減ってきているように思います。

 

逆に、トラフカミキリは大きなクワさえ残っていたら町中に生息していることもあります。東京23区にもみられますし、かの有名な東大学にもいたそうですよ。木が枯れてしまうと居なくなるので、時期限定的ではあります。本センター内でもたまに採れているのですが、ある日、センターの横に大きなクワの木が生えていて、そこから発生していたのに気づいたのですよ。でも、その木は既に枯れてしまっていて、今は採れなくなってしまっています。

 

さて、、、トラカミキリには色々な種があります。よくご紹介してきた「オオトラカミキリ」は、このトラフカミキリに似ていて、さらに巨大だからオオトラと名付けられたと考えられています。オオトラカミキリがいたらコトラカミキリもいそうなものですが、はい、ちゃんといます。これです。

 


コトラカミキリはトラフカミキリよりは小さいですが、トラカミキリの仲間としてはかなり大きな方です。そしてある意味トラフカミキリやオオトラカミキリよりも珍しい種で、北海道から中部地方かな、北の方にしかいません。また、山の中で出会うことは滅多にありません。コナラとかミズナラとか、いわゆるドングリを作る木が伐採されると、その新鮮な丸太に集まります。デザインもオオトラとかに比べると繊細で、カラフルで非常によい虫だと思います。

 

コトラカミキリに近い種で、こんな模様の種もいます。




これはクリストフコトラカミキリという種で、なんか模様が人工的な印象を受けます。コトラカミキリよりは分布が広く、また平地に近いところにも生息しています。習性はコトラとほぼ同じですね。

 

ミズナラの丸太の上を歩くクリストフコトラカミキリ

次もまたカラフルで、トラカミキリに見えない(というか日本の虫とは思えない)のもトラカミキリの仲間で、アカジマトラカミキリといいます。トラカミキリといえばオレンジと黒の縞模様を想像しますが、こちらは赤と黒の縞模様です。生きている時は特に綺麗です。

 


昔は、アカジマトラカミキリの有名な産地がなんと伊豆半島にあったのですよ。現在ではもっと確実に採集できるところが別の県にできたので有名ではなくなりましたが、今でも伊豆で見ることができます。

 

次回も、ネタに困ったらトラカミキリを紹介しようかな~と思っています。