2025年5月28日水曜日

ゼフィルス

 ギリシア神話の西風の神のことですが、蝶のグループにこの名前を冠するものがあります。響きが大変おシャレで、名前を付けた方はセンスあるな、と思います。日本語では、「ミドリシジミ」の仲間のことを指します。日本語はちょっと地味ですね。

 

メスアカミドリシジミ。ゼフィルスは翅の裏も特徴的な模様をしています

このミドリシジミの仲間の多くでは、その名の通りオスの翅が金緑色に輝き、その美しさは熱帯のモルフォチョウにも匹敵します。ただシジミチョウなのでそれほど大きくはありません。ほかにも、赤、というかオレンジ色の翅をもつアカシジミなど、ミドリではない種もいくつかいます。

 

こちらはアカシジミ、下田産です

筑波大学の中や、この下田周辺でも何種類かはいます。ブナ林だと種数は増えます。

 

ミドリシジミの仲間に出会うには飛び回る成虫を見つけるほか、越冬する卵を見つけるのも一般的になっています。冬であまり採集するものがない中、この卵を探しておいて、春に幼虫を飼育するのです。

 

飼育はあまり得意ではないのですが、この冬はずっとやってみたいと思っていたゼフィルスの飼育にチャレンジしてみました。

 

といっても、寒い冬の森の中で1mmにも満たない卵を探すのは容易ではありません。だいたいどのような場所に産むのかは分かっているのですが、経験がないとなかなか見つかるものではありません。種によっては高いところに産むので危険な木登りなども必要だと聞きます。

 

既に絶版になっている採卵のマニュアル本を何とか入手して勉強し、何度か採集に行ってようやくコツを掴み、少しだけ採集できました。はっきりいって、事前知識がないと話になりませんが、知識があるだけでは全然だめで、経験値を積む必要があります。

卵が得られたら飼育が待っています。ゼフィルスの多くはブナの仲間の新芽や花を食しますので、飼育にはそれらを入手する必要があります。自然界ではどの樹を食べるかはほぼ決まっていますが、飼育下ではだいたいどれでも食べます。下田周辺はクヌギやコナラ、カシなんかがたくさん生えているので、それほど苦労しません。

 

見事な保護色を示す幼虫。2匹います

カミキリやクワガタと違って、チョウの幼虫は栄養価の高いものを食べるためか大変成長が早く、見る見るうちに大きくなっていきます。なので飼育するのが楽しいです。そして1か月もしないうちに成長が終わり、蛹、そして成虫になります。羽化したての成虫をみると、それまでの苦労が報われる思いです。

 

羽化したばかりのオオミドリシジミのオス

オオミドリシジミ 学名がFavonius orientalisで、Favoniusはローマ神話でゼフィルスに相当する神の名だそうです。

キリシマミドリのメスです


キリシマミドリシジミ。日本産ミドリシジミの中で一番の輝きをもつ種で、似た色彩の種はいません。表だけでなく裏も銀色で派手です。おまけに木の低い位置に卵を生むという優しさまで備えています。やや南方系ですが、伊豆には結構います。

メスの翅の表側

キリシマはメスもブルーのラインがはっきり出て大変きれいですが、やはりキンキラキンのオスが見たいところです。が、、、、飼育した4匹すべてが雌になりました。偏りすぎではないでしょうか。

2025年4月29日火曜日

ウスバシロチョウ

前回、チョウを紹介しましたが。今回もチョウのことを紹介したいと思います。

 

モンシロチョウは小学校の教材にも取り上げられたことがあるほど、我々にとってなじみの深いチョウです。今でも取り上げられているのでしょうか?春になるとどこからともなく成虫が飛ぶようになり、食草もキャベツとか、我々も食べる野菜を食べて育つこともよく知られています。

 

スジグロシロチョウという、モンシロチョウにそっくりなチョウもいます。翅脈が黒っぽいのでそのような名前がついています。そっくりなだけあって、モンシロチョウに大変近縁です。飛んでいるときはなお区別しづらいです。なお、スジグロシロチョウはさらに3種類に分類されているようです。

 

スジグロシロチョウです

他にも、モンシロチョウにそっくりなチョウはいます。それがこちらです。

 

黄色の毛がおしゃれです

これは、ウスバシロチョウというチョウです。少し標高の高めの高原などではごく普通にいるチョウです。

 


並べてみると、スジグロシロチョウとウスバシロチョウはよく似ています。が、実は両者はかなり遠いグループです。というか、ウスバシロチョウは「シロチョウ」とよばれているものの、実際にはシロチョウの仲間ではなくて、アゲハチョウの仲間なのです。アゲハチョウといえば黄色と黒で大型のチョウですが、ウスバシロチョウとは形や色合い、翅の質感がかなり異なるので、なかなか信じがたい話ではあります。

 

ウスバシロチョウ(分類群を反映して、ウスバアゲハ、ともよばれます)の仲間は日本には3種類だけですが、世界では北の方に多くの種類が分布しています。また、日本のウスバシロチョウと異なって、赤や青の水玉模様が翅に現れてなかなか派手な仲間です。学名からとって、パルナシウス、ともよばれています。なんかおしゃれな響きがあります。

 

モンゴルだったかな、違うかもしれませんが、そちら方面のウスバシロチョウの仲間です


2025年3月28日金曜日

チョウ・蝶

 今年の冬は去年のものと異なり寒さが厳しかったですが、ようやく春の暖かさを感じる、、、、というにはいささか暑すぎるような、、、季節になりました。ちょうどこの時期にふさわしい話題でも挙げましょう

 

チョウ(蝶)は大型で綺麗な種が多いこと、ひらひらと可憐に舞うこと、我々の生活圏内でもよく見られること、主に昼間に観察されることなどから、大変馴染のある昆虫のグループで、昆虫に興味を示す方の多くはまずチョウに興味を持ち、その後他のグループへの興味へと移っていくことが多いようです。それぐらい、チョウは人間と関連が深いグループになっています。

 

かくいう私も、まずはチョウに興味を持ち、その後クワガタムシ、カミキリムシへと移ろっていきました。そのため今でもチョウには多大なる興味を持っていて、綺麗な種が飛んでいると他の虫を狙っていても思わず手が止まり、チョウの方を追ってしまいます。チョウと甲虫は採集中に見るべきポイントが異なるため、チョウに気を取られるとカミキリムシが採れなくなるのですが。

 

せっかくなので、散策中にみかけたり、サンプルとして持っている綺麗なチョウの写真を挙げておきましょう。

 

ギフチョウ。春だけに出現するので、春の女神、ともよばれています


オオムラサキ、日本の国蝶ですね。こちらは中国産らしいです

アサギマダラ。渡りをする蝶として有名で、大変綺麗です

クジャクチョウ。その名の通り綺麗な蝶の代表格で、学名もInachis io geishaで、ioはギリシア神話に出てくる女性の名前から、亜種名のゲイシャは日本のゲイシャですね。名前まで綺麗の塊です

ミヤマカラスアゲハ。カラスと付いていますが黒では無く緑に光る、これまた美しい大型のアゲハの仲間です。

美しい蝶の代表、モルフォチョウ。こちらはその中でも私が一番好きなキプリスモルフォです。

こちらも世界を代表する美しい蝶、南米のアグリアス。日本ではミイロタテハと呼ばれています。胴体が太くて、非常に早く飛ぶそうです。


さて、チョウは綺麗で昼間に活動し、目立つなどいいところばかりの虫なのですが、収集するとなると大きな欠点があります。さて、チョウは綺麗で昼間に活動し、目立つなどいいところばかり目立つ虫なのですが、収集するとなると大きな欠点があります。一匹が大きくとにかく面積を取るので、収納スペースが莫大に必要になるのです。チョウを専門に収集しようと思ったら、専用の部屋とかが必要になるでしょう。その点、甲虫は大きくてもそれほど面積を取らないし、体は硬くて丈夫なので、コンパクトに収納できます。

 

なお、チョウとよく似た昆虫としてガがあります。実はチョウは生物学的には「ガ」の一グループに過ぎません。ガはチョウの親戚、というわけでもなく、ガという大きなグループのなかにチョウのグループが入っています。ですので、「チョウはガ」なのです。


アゲハモドキ。一見アゲハチョウの仲間に見えますが、蝶ではありません。


 

2025年2月28日金曜日

筑波の自然?

我らが筑波大学がある地区は意外に自然が残されていて、あちらこちらで希少な生物が見られます。

 

去年の夏、出張のついでにアカアシオオアオカミキリ、というカミキリが採れそうなところを見に行ってきました。

 

このカミキリムシは緑に輝く美しい種ですが、夜行性なのであまり目立ちません。クヌギなどクワガタムシやカブトムシ採集でおなじみの木に付くので、これらを狙っていると見かけることがあります。しかし夜で暗いためか、またまた人気がないためか、あまり注目されることはないようです。

 

とあるちょっとした公園、横は国道や県道になっていて交通量が多いところで、まったく昆虫の観察なんかには向かなさそうな整備されたところですが、夜に見に行くと・・・

 

アカアシオオアオカミキリのペアです

こんな感じで、交尾中のものを含めて、ぺたぺたぺたとたくさん付いていました。公園とかの人工的な場所では、時に虫が異常繁殖することがありますが、そのような現象なのかもしれません。東京付近では爆発的に増えているところがあるそうです。

 

それにしても、歩くのがはやい。まるでゴキブリのようです。この素早さが人気のない原因なのかもしれません。もっとも、筑波の樹液の出ている木にはゴキブリなど不快な蟲もたくさん付いていますので気をつけないといけません。

 

当日出会った超巨大ムカデ

いずれにせよ、出張の楽しみがひとつ増えました。

2025年1月31日金曜日

ミラクルフルーツ

 2025年もはや1ヶ月が過ぎようとしていますね。さて今日は虫の話題ではありません。

 

この前、下田にあるスーパーマーケットに行ったとき、変わったものが売られていました。赤い、小さな実です。はじめて見ました。

 

一応値段とかは伏せます

これが有名な「ミラクルフルーツ」というもので、入手したいとずっと思っていました。これをあらかじめ食べておくと、酸っぱいものが甘く感じるようになるという、非常に不思議な機能があるそうです。

 

取り出してみたところです

それでは、さっそく試してみましょう。

そのまま食べると辛い思いをします

 

レモンを用意しました。普通であればとてもそのままかぶりつくことはできない酸っぱさですが、ミラクルフルーツをなめておくと、、、

 

完食です

なんとレモンをおいしく食べることができました。このように完食です。こんなにレモンをおいしいと感じるとは思いませんでした。

 

これに味をしめて、別の日に余っているミラクルフルーツでレモンを再度食べてみましたが、、、

 

2回目はレモンの酸っぱさがかなり残ってしまい、食べている途中で辛かったです。どうもミラクルフルーツ、舌にうまいことなじませて味覚を変えないといけないので、それがうまくいかなかったようです。この実を楽しむためには、もう少し練習が必要なようです。

まあ、一度やってみたかったので、人生の目標がひとつ達成できました。